地球温暖化防止と森林の役割

森林の炭素蓄積量は、地球の表面積の約70%を占める広大な海洋には及びませんが、地球の表面積の10%にも満たない森林での炭素(二酸化炭素CO2)の吸収量は海洋を上回ります。これは、光合成により吸収された大気中の二酸化炭素が、炭素Cとして、樹体をはじめ、森林土壌にも多く蓄積されています。

森林には炭素を貯蔵して、地球温暖化を防止する機能がある

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温室効果ガスを封じ込める2つの方法

地球温暖化を防止するための最優先課題として、二酸化炭素(CO2)の排出を削減することが挙げられています。二酸化炭素は、地球温暖化に及ぼす影響がもっとも大きな温室効果ガスだからです。二酸化炭素の排出を削減するには、その排出源である化石燃料(石油・石炭・天然ガスなど)の使用を抑えることですが、化石燃料に依存しきっている現代社会においては大変困難なことです。

そこで大気中の温室効果ガスを減らす対策として、主に次の2つが挙げられています。一つは、工場や発電所などから排出される二酸化炭素を回収して、地中や海中に貯留する方法で、もう一つは、森林(育成林)を利用して、二酸化炭素をバイオマス(幹や根などの樹体)に封じ込めてしまう方法です。

前者の温室効果ガスを地下深くに封じ込める方法は、CCS(Carbon Capture and Storage/炭素隔離貯留技術)とよばれ、欧米を中心にプロジェクトが進められており、日本でも、北海道苫小牧市で実証実験施設の建設が進んでいます。コスト面や技術面の課題を克服しながら、2030年の技術確立を目指しています。

※CCS(二酸化炭素回収貯留)…工場や発電所等から排出される二酸化炭素(Carbon dioxide)を大気放出(拡散)する前に回収し(Capture)、地下へ貯留(Storage)する技術。

後者の森林を活用する方法は、先の京都議定書の第一約束期間(2008年~2012年)における目標達成の過程でも採用され、大きな成果を上げました。

第一約束期間では、日本の温室効果ガスの排出削減目標6%のうち、その3分の2に相当する3.8%は森林による温室効果ガスの吸収量で達成する計画になっていました。平成26年7月、環境省の地球温暖化対策推進本部より、日本の目標が達成されたことが公表されました。

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化石燃料の使用は抑えることは困難

大気中の二酸化炭素が増加する原因は、人間の経済活動による化石燃料の消費です。毎年約328億トン(※)もの炭素を二酸化炭素として大気中に放出しています。この化石燃料の使用を抑えることが地球温暖化防止対策として重要です。

しかし、化石燃料は、電力等のエネルギー源をはじめとして、衣料、医薬など生活のさまざまな面で依存しています。化石燃料を使用していないようにみえる原子力発電でさえも、ウランの精製や発電所の建設、廃棄物の処理などで化石燃料を消費します。

化石燃料の使用を抑えることには限界があり、化石燃料ほど有用な(効率的な)エネルギー源は他にないようです。

※EDMC/エネルギー・経済統計要覧2020年版

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森林は地球温暖化時代の救世主!?

ところで、森林の樹木は光合成により成長しながら、大気中の二酸化炭素(CO2)を取り込み、同化・固定します。しかも、年々樹体に蓄積されていくので、温室効果ガスの吸収源として大変有効です。特に、人の手で育てる森林(育成林)は成長が早く、健全に保つことができれば、どんどん二酸化炭素を吸収して成長します。

このように、樹木が成長すると、大気中の二酸化炭素が樹体内に封じ込まれます。特に森林は長い年月にわたって成長し続ける樹木が集まっているため、大気中の二酸化炭素の吸収源として優れた機能を発揮します。しかも、木材となって、住宅や木製品として使われても、二酸化炭素は炭素として固定されたままです。つまり、森林の樹木は、大気中の二酸化炭素を、長年にわたり幹や枝、根など、さらには木材の中に固定・蓄積できるのです。

世界資源研究所(WRI)による2001~2019年の調査によると、森林は、呼吸や枯死して腐朽することなどで二酸化炭素を排出しますが、それらの排出量のおよそ2倍の二酸化炭素を光合成によって吸収していることが報告されています。現在、世界の森林は年間26億炭素トンの二酸化炭素を吸収していると考えられています。

森林に樹木による二酸化炭素の吸収と固定は、地下に封じ込める方法と比べて、安全面、コスト面、技術面等の課題・リスクが少ないといえるでしょう。

森林は大気中の二酸化炭素CO2を吸収、固定してくれる

森林の樹木は大気中のCO2を吸収し、炭素の形で固定。木材になっても固定したままです。そのため木造住宅は「第二の森林」と呼ばれています。

ところで、育成林に対して、天然林も二酸化炭素を吸収します。しかし、若齢木が成長する一方で、老齢となった樹木が枯死し、二酸化炭素を排出します。その収支がほぼ等しいため、二酸化炭素を増やすことも減らすこともなく、均衡が保たれています。ただし、大気中の二酸化炭素を取り込んで、固定しているという意味で、地球温暖化防止に役立っています。

次のグラフは1年間に1haあたりどれだけの二酸化炭素を固定するかを比較したグラフです。日本の育成林の主要樹種であるスギ林がその能力が高いことがわかります。

二酸化炭素固定量の比較

二酸化炭素固定量の比較

知っている人も多いと思うけど、地球温暖化の一番の原因は、人間の生産活動などによって排出される「二酸化炭素(CO2)」の増加なんだ。

そのCO2を樹木は吸収して成長するんだよ。そして、成長盛りの若い木は、高齢な木よりもCO2をより多く吸収するんだ。使うべき時期になっている高齢な木は積極的に伐って、上手に使って、伐ったところには、若い木を植えて、育てることで、大気中のCO2を減らすことができるんだよ。

森林・林業学習館 for きっず

〔参考文献・出典〕
社団法人日本林業協会「地球環境問題と日本の森林・林業」/「森の生態」只木良也/財団法人日本木材総合情報センター木づかい運動パンフレット「3.9GREENSTYLE GUIDE」/森林総合研究所「季刊森林総研 No.59 2022」


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