光合成と温暖化防止

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樹木による炭素固定

草花などの草本植物の場合は、光合成を行いながら成長します。そして、花を咲かせ、種子を残して、1年~数年で枯れてしまいます。植物が枯れると、微生物等の作用で分解され、土に還るときには、光合成で吸収した二酸化炭素(CO2)は、大気中に戻ります。そのときのCO2は、もともと大気中にあったCO2なので、大気中のCO2は増えるわけではなく、その収支はプラマイゼロになります。

植物が枯れ、土に還るときには、光合成で吸収したCO2も大気中に還る

植物が枯れ、土に還るときには、光合成で吸収したCO2も大気中に還る

一方、樹木の場合は長い年月をかけて成長するため、光合成により大気中から吸収した二酸化炭素(CO2)が炭素(C)の形で蓄積(貯蔵)されていきます。これを「炭素固定」といいます。

さらに、樹木が木材や木製品になっても、光合成により大気中から吸収したCO2は、炭素として固定されたままです。燃やさない限り、炭素はずっと貯蔵されています。木製品は地球温暖化防止機能を持っているのです。

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カーボンニュートラル

ところで、温暖化防止に貢献する森林は、人が育てる育成林(人工林)です。育成林は木材として使うために育てられている森林(木の畑)です。育成林のおもな樹種は、スギやヒノキ、マツ類などの針葉樹です。針葉樹は、広葉樹よりも多くのCO2を吸収することが知られていますし、針葉樹の中でもよく成長する若齢木ほど、CO2をより多く吸収します。

そのため、成熟した木は伐って、住宅や家具などの木製品として使えば、先の理由から大気中のCO2を減らしていることになりますし、さらに伐ったところに若齢木(苗木)を植えることが、温暖化防止につながるのです。

一方、天然林では、樹木の成長とともにCO2を吸収しますが、一方で枯死木などが分解されCO2を放出します。長期的に、このバランスが変わらないため、天然林では、大気中のCO2を増やすことも減らすこともしません。

樹種別・林齢別炭素吸収量

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炭素固定をミクロに見ると…

二酸化炭素(CO2)は文字通り、1つの炭素原子(C)と2つの酸素原子(O2)が結びついてできています。

森林の樹木は光合成により、大気中のCO2を吸収し、光合成を行うことにより成長します。 吸収した二酸化炭素(CO2)は炭素(C)のみが取り出され、糖(ブドウ糖、有機物)となり、樹体(幹や根、枝・葉)をつくります(※)。残った酸素(O2)は大気中に放出されます。

※樹木は光合成だけでなく、根によって地中から養分を取り込み、アミノ酸をつくり、自分に必要なタンパク質をつくります。

炭素の模式図

二酸化炭素(CO2)が1個だけ樹木に取り込まれると、1個の炭素(C)が、樹体内の有機物として貯蔵されます。すると、大気中の炭素(C)が1個減り、結果として、大気中の二酸化炭素(CO2)も1個減ることになります。大気中の炭素が1個減れば、酸素(O)も炭素(C)と結びつくことができず、二酸化炭素(CO2)もできないからです。つまり、樹木や木材が100個の炭素を貯蔵しているうちは、大気中の二酸化炭素も100個だけ減っていることになるのです。

※ただし、樹木が枯死木となって分解されたり、また、木材として利用された後に焼却したりすると、樹体内(木材内)の炭素は再び大気中の二酸化炭素と結びつき、二酸化炭素が発生することになります。

※ここでは、説明のため1個や100個などと表現していますが、実際には、無数の炭素や二酸化炭素が、大気と樹木(木材や木製品)の間を行き来しています。


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