温室効果ガス おんしつこうかがす
本来は、人間にとって必要な存在
温室効果ガス(おんしつこうかがす)とは、大気中に存在し、地球から放出される赤外線(熱)を吸収・再放射することで、大気を暖める働きを持つ気体の総称です。この作用を「温室効果」と呼び、私たちが地球で快適に生活できる環境を保つ上で不可欠な自然の仕組みです。
適度な温室効果は必要不可欠
温室効果は悪者のように語られることもありますが、実際には生命が生きられる地球環境をつくるために重要な働きをしています。たとえば、温室効果がなければ地表の平均気温は約−18℃になってしまい、人間や多くの生物が生存できません。温室効果ガスが太陽からの熱を閉じ込めることで、地球の平均気温を約15℃に保っているのです。
過剰な温室効果と地球温暖化
しかし、近年は人間活動によって温室効果ガスが急増し、問題となっています。特に化石燃料(石炭・石油・天然ガス)の大量消費により、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が急激に上昇。その結果、過剰な温室効果が生じ、地球温暖化やそれに伴う気候変動が深刻化しています。
京都議定書で規制された6つの温室効果ガス
2005年に発効した国際的な温暖化対策の枠組みである京都議定書では、次の6種類の温室効果ガスが規制対象とされました。
- 二酸化炭素(CO2)
- メタン(CH4)
- 一酸化二窒素(N2O)
- ハイドロフルオロカーボン類(HFC)
- パーフルオロカーボン類(PFC)
- 六フッ化硫黄(SF6)
これらのガスは、それぞれ異なる性質を持ちますが、いずれも強力な温室効果をもたらし、大気中に長くとどまる性質があります。
主な温室効果ガスとその特徴
ガス名 | 特徴 |
---|---|
二酸化炭素(CO2) | 最も多く排出される温室効果ガス。主に化石燃料の燃焼によって発生。 |
メタン(CH4) | 家畜のげっぷや水田、ゴミ処理場から発生。CO2よりも強い温室効果を持つ。 |
一酸化二窒素(N2O) | 農業で使われる肥料や化学反応から発生。長期にわたり温暖化に影響。 |
HFC・PFC・SF6 | 冷媒や絶縁ガスなどに使用される。非常に強力で、分解されにくい。 ※HFC:ハイドロフルオロカーボン類、PFC:パーフルオロカーボン類、SF6:六フッ化イオウ |
最新動向:パリ協定と脱炭素社会
2015年には「パリ協定」が採択され、世界の平均気温上昇を産業革命前より1.5℃以内に抑えることを目標としています。これを達成するため、各国が温室効果ガス排出削減に取り組んでいます。
日本でも「2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)」を掲げ、再生可能エネルギーの推進、省エネ技術の活用、森林による吸収など多方面からの対策が進められています。
温室効果ガスは本来、地球にとって必要な存在です。しかし人間活動によって過剰に排出されると、地球温暖化という深刻な問題を引き起こします。今後の社会全体での削減努力と、一人ひとりの意識が未来の地球を守る鍵となります。