育成単層林 いくせいたんそうりん

同じ樹齢の木を一斉に育てた森林

育成単層林(いくせいたんそうりん)とは、樹齢や樹高がほぼ等しい樹木から構成される森林(単層林)の一種で、森林経営や木材生産を目的として計画的に育てられた人工林です。

育成単層林 同じ樹齢の木を一斉に育てた森林 の写真

育成単層林|同じ樹齢の木を一斉に育てた森林

どのように育成単層林はつくられるのか?

育成単層林は、森林を構成する樹木の全部または大部分を一度に伐採し、そのあとに一斉に植林を行うことにより造成します。概ね以下のような手順で造成されます。

  1. 皆伐(かいばつ)

    既存の森林を構成している樹木の全部または大部分を一度に伐採します。これにより広範な開けた土地が生まれます。

  2. 一斉植林

    伐採後の土地に、同じ樹種・同じ年齢の苗木を一度に植えることで、樹齢のそろった林を作ります。

  3. 育成管理

    下刈り、間伐、枝打ちなどの適切な森林管理を継続的に行うことで、健全で良質な単層林へと育てます。

育成単層林の特徴と利点

育成単層林には、さまざまなメリットがあります。まず、樹木の樹齢や樹高がそろっているため、林内の光環境が均質になり、森林の成長を計画的に管理しやすくなります。特に木材生産においては、すべての木が同時に育つことで品質が一定し、伐採や収穫の計画が立てやすく、作業の効率化や機械化も可能となります。さらに、樹種や生育速度がそろっていることから、間伐や伐採といった管理作業が容易で、整然とした美しい景観も形成されます。同一樹種で育成されることにより、木材としての経済的価値も高まる点も大きな利点です。

課題

育成単層林には以下のような課題も存在します。

  • 生物多様性が低下しやすい

    同じ樹種だけが植えられるため、動植物の多様性が乏しくなることがあります。

  • 病害虫や気候リスクに弱い

    単一の樹種・樹齢で構成されるため、ひとたび病害虫や風害が発生すると、被害が森林全体に及びやすい傾向があります。

そのため、最近では多層林化や混交林の導入、間伐による多様性の回復など、育成単層林のリスクを補う工夫も行われています。

育成単層林は、日本の森林の多くを占める重要な林形であり、木材生産や森林管理の面で大きな役割を果たしています。しかし、環境保全や気候変動への対応といった観点からは、単一樹種・単層構造に偏らない多様性のある森づくりが求められています。そのため、多層林との組み合わせや広葉樹を取り入れた混交林の整備、生きものが生息できる空間の確保などの工夫が進められています。こうした取り組みを通じて、自然環境と調和しながら、災害や気候変動にも強い、持続可能な森林づくりが可能となります。


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