空飛ぶエビフライ? ~ オオスカシバという不思議な存在です

ある夏の昼下がり、ツツジの花に顔を近づけたときのことです。「ブーン…」という羽音とともに目の前に現れたその姿に、一瞬ハチドリかと思ってしまいました。

でも、それは鳥ではなく、オオスカシバ(大透翅)という名前のガの仲間だったのです。

透明な翅(はね)でホバリングしながら蜜を吸う姿は、まさにハチドリそっくり。しかし、オオスカシバはれっきとしたスズメガ科の昆虫です。昼間に活動し、鮮やかな体色や愛らしい毛束など、ガのイメージをくつがえすような個性に満ちています。

昼に活動する、透明翅のガです

ガといえば「夜に飛ぶ」「地味な色」「蛍光灯に集まる」といった印象があるかもしれませんが、オオスカシバはまるで正反対です。昼間に活動し、翅は透明。背中は明るい黄緑色、腹部は白地に赤や黒の帯があり、まるでおしゃれをしているかのようなカラフルな見た目です。尻尾のような毛束をふわふわと揺らしながら飛び回る様子はとても愛嬌があり、「空飛ぶエビフライ」という愛称まであるほどです。

この透明な翅は、実は羽化直後には灰白色の鱗粉(りんぷん)で覆われていますが、羽ばたいた瞬間にその鱗粉が落ち、あの美しい透明な翅になるのです。

翅の表面には微細な粒がびっしりと並んでいて、それが光の反射を抑え、高い透明度を生み出していることが知られています。まるで「見えにくくなるための工夫」が施されたようです。

好物はクチナシ。でも子どもの頃は…

成虫のオオスカシバは、ツツジやアザミ、クチナシの花の蜜が大好物です。2cmほどあるストローのような口吻(こうふん)を使って、ホバリングしながら器用に蜜を吸います。ただし、深い花の蜜には届かないため、吸蜜できる花はある程度限られています。

一方で、幼虫時代の食べ物もクチナシやコーヒーノキの葉です。特にクチナシは庭木として人気があるため、都市部でもよく見かけることができます。黄緑色や茶色の大きな幼虫は、旺盛な食欲で木を丸坊主にしてしまうこともありますが、やがて地面に降り、落ち葉などを使って繭(まゆ)を作り、蛹(さなぎ)で冬を越します

昼行性になった理由とは?

「なぜオオスカシバは昼に活動するようになったのか?」
その謎に迫る研究結果が、2023年に東京工業大学(現在の東京科学大学)から発表されました。

研究によると、オオスカシバの遺伝子には、「光受容タンパク質(オプシン)」の進化が見られるそうです。特に、長波長(赤系)や青色の光を感知するオプシン遺伝子が発達しており、これが夜行性から昼行性へと進化するきっかけになった可能性があるとのことです。

花が咲く昼間に活動できれば、蜜をより効率よく集めることができます。でも、同時に敵にも見つかりやすくなります。そこで、透明な翅や、ハチに似た姿(これをベイツ型擬態といいます)で敵の目をくらます…。まさに生き残るための進化の知恵なのです。

都市にもいる、小さな進化の証人です

オオスカシバは本州以南に広く分布しており、都市の庭や公園でもよく見られる昆虫です。その姿に驚いたり、つい写真を撮りたくなってしまったりする人も多く、近年では「推し昆虫」としてSNSで紹介されることもあります。

「ガ」というだけで敬遠せず、もし見かけたら、ぜひその姿をじっくり観察してみてください。ホバリングしながら蜜を吸う姿には、長い年月をかけてたどりついた進化の物語がそっと息づいています。

もしかすると、次に出会ったときには、あなたも思わずこうつぶやくかもしれません。
「おっ、また空飛ぶエビフライが来た!」

オオスカシバの基本情報(生態・特徴まとめ)

項目 内容
和名 大透翅(オオスカシバ)
分類 チョウ目(鱗翅目)/スズメガ科/ホウジャク亜科
学名 Cephonodes hylas
英名 larger pellucid hawk moth
大きさ 開張 約50~70mm
見られる時期 夏から秋の昼間(特に6月~9月頃の晴れた日)
分布 本州・四国・九州・沖縄(暖かい地域に広く分布)
体の特徴 うぐいす色の太い胴体を持ち、腹部に赤褐色の帯がある。腹端には黒い毛束があり、腹面は白い。翅は透明で、黒い翅脈が見える。
翅の特徴 羽化直後は白い鱗粉に覆われているが、羽ばたくことで脱落し透明になる。
表面には微細構造があり、光の反射を抑えて透明度を高めている。
飛び方 素早く羽ばたき、直線的に飛ぶ。
花の前でホバリング(空中停止)しながら吸蜜する。
活動時間 昼行性(スズメガとしては珍しい)
食性
(成虫)
花の蜜を吸う(ツツジ、アザミ、クチナシなど)
約2cmの口吻を使うため、深すぎる花の蜜は吸えない
食草
(幼虫)
クチナシ、コーヒーノキなど
幼虫の特徴 黄緑色または褐色で、尾に角(尾角)をもつ。
葉を多く食べるため、植物が丸坊主になることもある。
生活史 年1~2回発生(年2化)
成長した幼虫は地上で繭を作り蛹になる
蛹の状態で越冬する
生息環境 都市部の公園、庭、花壇などでも見られる
人の生活圏に近い場所にも多い
擬態 ハチに似た体色や飛び方により捕食者を避ける(ベイツ型擬態)
羽音もハチに似ているが、刺さない
特徴的な行動 ホバリングしながら吸蜜する姿がハチドリに似るため、しばしば誤認される。また、羽音と見た目から「ハチ」と勘違いされやすい。

※動きは早いが、静かに近づけば、わりと観察しやすい

進化の特徴 光受容タンパク質(オプシン)の進化により、昼行性へ適応した可能性がある

🌈 ふしぎないきもの!
オオスカシバってなあに?

みんなは、昼間に花のまわりで「ブーン…」と飛んでいる生きものを見たことがありますか?

もしかすると、それは見た目がちょっと変わった「オオスカシバ」かもしれません。

オオスカシバは、なんとガのなかまです。でも、ふつうのガとはちょっとちがいます。

🪽 すきとおった羽をもつガ!

オオスカシバのいちばんの特徴は、すきとおった羽(はね)です。

羽がガラスのように透明なので、飛んでいるとちょっと不思議な感じがします。

実はこの羽、うまれたばかりのときは白っぽい粉(こな)でおおわれています。でも、羽ばたくとその粉が落ちて、透明になるのです。

🌼 空中でピタッ!ハチドリみたい

オオスカシバは、花の前でピタッと止まるように飛びながら、蜜(みつ)をすいます。

そのようすは、まるでハチドリのようです。

長いストローのような口をつかって、ツツジやクチナシなどの花の蜜をすっています。

🍃 子どものころは葉っぱをモリモリ!

オオスカシバの子ども(幼虫)は、クチナシなどの葉っぱを食べて大きくなります。

とても食いしんぼうなので、葉っぱをたくさん食べてしまうこともあります。

そのあと、地面におりて、さなぎになって冬をすごします。

🔍 どうして昼に活動するの?

多くのガは夜に活動しますが、オオスカシバは昼に活動します。

これは、花がたくさん開いている時間に蜜をすうためだと考えられています。

また、体の色やすがたがハチに似ているので、敵から身を守る工夫にもなっています。

🏙 町の中でも見られるよ!

オオスカシバは、日本では本州より南の地域に広くすんでいて、公園やおうちの庭でも見ることができます。

もし見つけたら、びっくりして逃げずに、そっと観察してみてください。

きっと、「ガってこんなにおもしろいんだ!」と感じるはずです😊

もしかしたら、みんなも思うかもしれません。

「空を飛ぶエビフライみたい!」って!

森林・林業学習館 for きっず

〔参考・出典〕
北海道ぐらし「オオスカシバとは?」/東京科学大学 プレスリリース/tenki.jp「オオスカシバはハチドリじゃない!」


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