カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラル(Carbon Neutral)とは、カーボン(炭素)、ニュートラル(中立)の名称のとおり、自然界のカーボン(炭素)の増減がない循環や状態のことをいいます。長い期間で見れば、大気中の炭素は樹木と大気の間を循環しているだけで、大気中の炭素を増やすことも、減らすこともありません。つまり、炭素の収支はゼロ(=ニュートラル)。この安定した炭素の循環を「カーボンニュートラル」といいます。

※このように、カーボンニュートラルは、人間の活動による二酸化炭素の排出量と吸収量がつりあう状態を意味します。ただし、二酸化炭素だけでなく温室効果ガス全体での排出量と吸収量かつりあう状態を指す場合もあります。

気候変動・地球温暖化は、人類の未来を左右する深刻な問題となっています。世界中の科学者による研究論文を詳細に検討したIPCC(※)の第6次評価報告書(2021年)では、人為による地球温暖化はもはや「疑う余地のない」ものと報告されており、さらに今後10年が気候変動対策の正念場といわれます。こうしたなか、森林がカーボンニュートラルに果たす役割がますます注目されてきています。

※IPCCとは、国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略称で、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が母体となり、政策決定者(政治家)や実務者に科学者からの気候変動等に関する正しい情報を伝えることを目的としてつくられた国際機関。

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炭素の循環とカーボンニュートラル

光合成は、植物の葉で行われます。葉はブドウ糖(炭水化物)を作り出す、いわば「工場」の役割を担っています。植物は光合成(二酸化炭素を吸収して、酸素を吐き出すこと)を繰り返しながら成長します。

樹木の場合、ブドウ糖から、より複雑な炭水化物がつくられ、幹や根、枝葉をつくります。そして、幹や根に含まれる炭素は、その後、長い年月にわたり固定(貯蔵)されることになります。さらに木材になっても、ずっと固定(貯蔵)されたままです。燃やされたり、微生物に分解されたときに酸素と結びつき、二酸化炭素となり、大気中に放出されます。

100年前の出来事

炭素にしてみれば、「100年前に木の葉に吸収されて、久しぶりに大気にもどってきたよ!」という感じかもしれません。

この循環の中で炭素は、もともと大気に存在していた二酸化炭素が光合成により葉から吸収され、それが樹体をつくる細胞(有機物)となり、さらには、住宅や家具などをつくる木材となり、再び大気に戻ってきたことになります。そしてまた葉に吸収されて・・・の繰り返しで、長い期間で見れば、樹木と大気の間を炭素が循環しているだけで、大気中の炭素を増やすことも、減らすこともありません。つまり、炭素の収支はゼロ(=ニュートラル)。この安定した炭素の循環を「カーボンニュートラル」といいます。「カーボンニュートラル」は環境問題を考えるときのキーワードの一つになっています。

※カーボンニュートラルに対して、二酸化炭素(CO2)の排出量が吸収量より多い状態を「カーボンネガティブ」、二酸化炭素(CO2)の排出量が吸収量より少ない状態を「カーボンマイナス」と呼んでいます。

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カーボンニュートラルを理解するための基礎知識

炭素と二酸化炭素の関係

炭素と二酸化炭素は、その名のとおり、密接な関係にあります。炭素は化学式ではC、二酸化炭素はCO2(Oは酸素)。

つまり、炭素が酸素2つと手を結んだとき(結合したとき)に二酸化炭素になります。

逆に炭素と酸素が離れたときに、炭素は別の物質と結びついて、有機物(ブドウ糖、炭水化物など)を構成する物質の一部となります。

炭素は酸素2つと手を結ぶと二酸化炭素になる

炭素が酸素2つと手を結ぶと二酸化炭素になる

炭素が酸素と手を結ぶとき(C → CO2)

炭素は生命の基本となる有機物(ブドウ糖、炭水化物など)の骨格となる重要な元素です。炭素(C)は、私たち人間や植物だけでなく、微生物、爬虫類、両生類、鳥類、哺乳類…、すべての生物に含まれています。その生物体が燃焼したり、微生物に分解されたりするとすると、炭素は酸素と手を結び、二酸化炭素CO2となって大気中に放出されます。

例えば、山火事のときには、木に含まれている炭素が、一気に酸素と手を結び二酸化炭素となり大気中に放出されます。人間の火葬も同じです。

呼吸も燃焼です。体内でブドウ糖(=炭素が含まれる)が、炎が出ない程度に、ゆっくりと燃焼します。その結果、二酸化炭素が吐き出されるのです。

炭素が酸素と手を離すとき(CO2 → C)

光合成のイメージ図

葉は光合成を行う化学工場

大気中の二酸化炭素が、酸素と炭素が離れるのは、植物が光合成を行うときです。つまり、太陽光と水を利用して、二酸化炭素からブドウ糖(炭水化物)をつくり、酸素は大気中に放出されます。

このように自らのエネルギー源や自らの体を構成する有機物(ブドウ糖、炭水化物)を自ら作ることができるのは、植物のみで、人間や動物は植物が作った有機物を摂取することで生きています。

02/05

低炭素社会という言葉の由来

炭素がなければ、当然、二酸化炭素もつくられません。二酸化炭素は温室効果ガスのひとつで、大気中の二酸化炭素が過剰になると、温暖化をもたらします。

また、温暖化対策における「カーボンニュートラル」とは、人間活動による二酸化炭素の排出量と吸収量をつりあわせることで、炭素循環を自然状態の均衡に近づけることを意味します。

それゆえ、環境問題を扱う場合、炭素の排出削減の観点から「低炭素社会」は次のように言い換えることができるでしょう。

低炭素社会(炭素の濃度が低い社会)
 =二酸化炭素の濃度が低い社会
 =二酸化炭素の排出が抑えられた社会
 =カーボンニュートラルが実現した社会

これが「低炭素社会」というキーワードの由来(中身)です。

03/05

カーボンニュートラルとネットゼロの違い

カーボンニュートラル(Carbon Neutral)は、人間の活動による二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量をつり合わせて、炭素循環を均衡に保つことです。

ネットゼロ(Net Zero)も排出量と吸収量をつり合わせて、二酸化炭素の正味排出量をゼロにすることです。ネットは「正味(差し引き)」を意味します。ただし、二酸化炭素だけでなく温室効果ガス全体の正味排出量がゼロという意味で使われる場合もあります。

「カーボンニュートラル」や「ネットゼロ」は、いずれも人間の経済活動による温室効果ガス(特に二酸化炭素)の排出を抑制するとともに、抑制しきれない分を、森林管理などによる吸収によって相殺することで、全体としての温室効果ガスの排出量を正味ゼロにするという考え方です。ただし、その意味合いは、さまさまな場面や主体(国、自治体、企業など)によって多少の差異があります。これらの言葉を使うときは、状況に応じて相応しい定義を決めていく必要がありそうです。

国際的な取り組みの中での定義をみると、「カーボンニュートラル」や「ネットゼロ」に対して、温室効果ガスの排出源に差異があります。カーボンニュートラルは燃料の燃焼や電気の使用による排出を対象としますが、ネットゼロは、さらに流通や廃棄などによる排出量も加わります。つまり、原材料の調達から、製造、消費者までのすべての流通の段階において、着実に温室効果ガスの排出と吸収の収支をゼロにすることです。

なお、カーボンゼロ(Carbon Zero)という用語もあります。これは、人間の活動による二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを目指して使われます。

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日本の取り組み「2050年カーボンニュートラル」

日本では2030年度へ向けて、温室効果ガスを2013年度比で46%を削減することを喫緊の目標としています。さらに、カーボンニュートラルの取り組みのもと、9割の脱炭素化を目標とし、削減できない大気中の炭素については、強制的に回収し、地下に貯留したり、森林の成長を促進することで樹体内への固定を図っていくことで、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにすることを目指しています。


〔参考文献・出典〕
九州農政局「炭素くん」


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