カーボンニュートラルとは何か? ― 炭素の循環から未来の地球を考える ―

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カーボンニュートラルとは?

「カーボンニュートラル(Carbon Neutral)」とは、人間の活動によって排出される二酸化炭素(CO₂)と、それを森林や植物が吸収する量がつり合った状態を意味します。「カーボン」は炭素、「ニュートラル」は中立を表し、炭素の出入りがプラスマイナスゼロになることを目指します。

たとえば、木材や草などのバイオマスを燃やして発生するCO₂は、もともとその植物が成長過程で大気中から吸収したものであるため、大気中の炭素を循環させているだけと考えられます。これが「カーボンニュートラル」の基本です。

02/07

炭素の循環と光合成の役割

● 植物は「炭素を貯める工場」

植物の葉は、光合成によってブドウ糖(炭水化物)を作り出す化学工場のような働きをします。光合成では、空気中の二酸化炭素と水から有機物が作られ、酸素が大気に放出されます。

樹木はこのブドウ糖からより複雑な炭水化物を合成し、幹・枝・根を形成して炭素を長期的に固定(貯蔵)します。そして木材となった後も炭素はそのまま保持(貯蔵)されます。やがて燃やされたり微生物に分解されると、炭素は酸素と再結合し、二酸化炭素となって大気に戻ります。

100年前の出来事

例えば「100年前に樹木に吸収された二酸化炭素(炭素)が、木材の中に保持(固定)され、住宅や家具となって使われた後、今、燃やされて再び大気に戻ってきた」というように、炭素は長い時間をかけて大気中を循環しています。

このような「吸収→貯蔵→放出→再吸収」のサイクルでは、大気中の炭素の増減はありません。この安定した炭素の循環がカーボンニュートラルです。

※補足:排出量が吸収量を上回る場合は「カーボンネガティブ」、吸収量が排出量を上回る場合は「カーボンマイナス」と呼ばれます。

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炭素と二酸化炭素の関係

● 炭素が酸素と結びつくと(二酸化炭素)

炭素(C)は生命の基本構成要素で、酸素(O)と結びつくことで二酸化炭素(CO₂)になります。これは呼吸や燃焼、微生物による分解などで発生します。

たとえば、人間の呼吸や山火事、火葬などでも炭素が酸素と結びついてCO₂が発生します。

※呼吸も燃焼です。体内でブドウ糖(=炭素が含まれる)が、炎が出ない程度に、ゆっくりと燃焼します。その結果、二酸化炭素が吐き出されるのです。

炭素は酸素2つと手を結ぶと二酸化炭素になる

炭素が酸素2つと手を結ぶと二酸化炭素になる

● 炭素が酸素と離れるとき(光合成)

光合成のイメージ図

葉は光合成を行う化学工場

大気中の二酸化炭素が、酸素と炭素が離れるのは、植物が光合成を行うときです。植物は光合成によってCO₂から炭素(C)を取り出し、有機物(ブドウ糖など)を作ります。酸素(O₂)は大気中に戻され、人間や動物が再び呼吸で利用します。炭素を有機物として取り込むことができるのは植物だけです。人間や動物は植物が作った有機物を摂取することで生きています。

04/07

低炭素社会とは?

地球温暖化の主な原因は、大気中のCO₂など温室効果ガスの過剰な蓄積です。これを抑える社会を「低炭素社会」と呼びます。

  • 低炭素社会 = CO₂の濃度が低い社会
  • CO₂の濃度が低い社会 = 排出が抑えられ、排出と吸収がつりあった社会
  • 排出が抑えられ、排出と吸収がつりあった社会 = カーボンニュートラルが実現された社会

このように、低炭素社会の実現はカーボンニュートラルを目指すことでもあります。

気候変動・地球温暖化は、人類の未来を左右する深刻な問題となっています。世界中の科学者による研究論文を詳細に検討したIPCC(※)の第6次評価報告書(2021年)では、人為による地球温暖化はもはや「疑う余地のない」ものと報告されており、さらに今後10年が気候変動対策の正念場といわれます。こうしたなか、森林がカーボンニュートラルに果たす役割がますます注目されてきています。

※IPCCは、国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略称で、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が母体となり、政策決定者(政治家)や実務者に科学者からの気候変動等に関する正しい情報を伝えることを目的としてつくられた国際機関です。

05/07

カーボンニュートラルとネットゼロの違い

カーボンニュートラル(Carbon Neutral)は、人間の活動による二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量をつり合わせて、炭素循環を均衡に保つことです。

ネットゼロ(Net Zero)も排出量と吸収量をつり合わせて、二酸化炭素の正味排出量をゼロにすることです。ネットは「正味(差し引き)」を意味します。ただし、二酸化炭素だけでなく温室効果ガス全体の正味排出量がゼロという意味で使われる場合もあります。

なお、カーボンゼロ(Carbon Zero)という用語もあります。これは、人間の活動による二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを目指して使われます。

用語 定義・特徴
カーボンニュートラル CO₂排出と吸収の収支をゼロに。燃料や電力の使用による排出が対象。
ネットゼロ 温室効果ガス全体の正味排出量をゼロに。製造・流通・廃棄も含む。
カーボンゼロ CO₂の排出を極力ゼロにすることを目指す。

「カーボンニュートラル」や「ネットゼロ」は、いずれも人間の経済活動による温室効果ガス(特に二酸化炭素)の排出を抑制するとともに、抑制しきれない分を、森林管理などによる吸収によって相殺することで、全体としての温室効果ガスの排出量を正味ゼロにするという考え方です。ただし、その意味合いは、さまさまな場面や主体(国、自治体、企業など)によって多少の差異があります。これらの言葉を使うときは、状況に応じて相応しい定義を決めていく必要がありそうです。

国際的な取り組みの中での定義をみると、「カーボンニュートラル」や「ネットゼロ」に対して、温室効果ガスの排出源に差異があります。カーボンニュートラルは燃料の燃焼や電気の使用による排出を対象としますが、ネットゼロは、さらに流通や廃棄などによる排出量も加わります。つまり、原材料の調達から、製造、消費者までのすべての流通の段階において、着実に温室効果ガスの排出と吸収の収支をゼロにすることです。ネットゼロは、サプライチェーン全体の排出も含めた、より包括的な概念といえます。

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日本の目標「2050年カーボンニュートラル」

日本では、2030年度までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを中間目標とし、さらに2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指しています。具体的には、再生可能エネルギーの導入や産業の電化などによって約9割の排出削減を進め、残る排出については、技術的手段によるCO₂の回収・貯留(CCS)や森林の成長促進などによる炭素の吸収・固定によって相殺することが想定されています。

  • 2030年までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減
  • 再生可能エネルギーや水素・アンモニアの導入
  • 森林整備によるCO₂吸収量の強化
  • 排出されたCO₂を地下に貯留するCCS(Carbon Capture and Storage)の導入

企業や自治体、地域でも脱炭素への取り組みが進んでおり、再生可能エネルギーの導入や、建築・交通分野での省エネ技術の活用が広がっています。

07/07

未来のために私たちができること

カーボンニュートラルの実現には、日々の行動や選択が重要です。以下のようなことが実践できます:

  • 再生可能エネルギーを選ぶ
  • 節電・省エネを心がける
  • 森林保全や植林活動への参加
  • エコ製品や脱炭素サービスを選ぶ
  • 気候変動について学び、発信する

「炭素とどう付き合うか」を考え、行動することが、持続可能な未来への第一歩です。

カーボンニュートラルってなに?

カーボンニュートラルとは、地球の空気の中にある二酸化炭素(CO₂)の量をこれ以上増やさないようにする考え方です。木や草は、成長するあいだに空気からCO₂を取りこみ、体の中にためます。でも、木が燃えたり、腐ったりすると、またCO₂が空気に戻ってしまいます。このように、CO₂が出たり吸われたりすることを「炭素の循環(じゅんかん)」といいます。

わたしたちのくらしでは、電気を使ったり車を動かしたりするとCO₂が出ます。これをへらすために、再生可能エネルギーを使ったり、木を植えたりして、出すCO₂と吸うCO₂のバランスをゼロにするのが「カーボンニュートラル」です。

日本も、2050年までにカーボンニュートラルを目指しています。未来の地球を守るために、みんなでできることを考えていくことが大切です。

森林・林業学習館 for きっず

〔参考文献・出典〕
九州農政局「炭素くん」/環境省「地球温暖化対策計画」(2021年更新)/総合資源エネルギー調査会「グリーン成長戦略」/経済産業省「カーボンニュートラル実現に向けたロードマップ」


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