カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、カーボン(炭素)、ニュートラル(中立)の名称のとおり、自然界のカーボン(炭素)の増減がない循環や状態のことをいいます。長い期間で見れば、大気中の炭素は樹木と大気の間を循環しているだけで、大気中の炭素を増やすことも、減らすこともありません。つまり、炭素の収支はゼロ(=ニュートラル)。この安定した炭素の循環を「カーボンニュートラル」といいます。
炭素と二酸化炭素

炭素と二酸化炭素は、その名のとおり、密接な関係にあります。炭素は化学式ではC、二酸化炭素はCO2(Oは酸素)。
つまり、炭素が酸素2つと手を結んだとき(結合したとき)に二酸化炭素になります。
逆に炭素と酸素が離れたときに、炭素は別の物質と結びついて、有機物(ブドウ糖、炭水化物など)を構成する物質の一部となります。

炭素が酸素2つと手を結ぶと二酸化炭素になる
炭素が酸素と手を結ぶとき(C → CO2)
炭素は生命の基本となる有機物(ブドウ糖、炭水化物など)の骨格となる重要な元素です。炭素(C)は、私たち人間や植物だけでなく、微生物、爬虫類、両生類、鳥類、哺乳類…、すべての生物に含まれています。その生物体が燃焼したり、微生物に分解されたりするとすると、炭素は酸素と手を結び、二酸化炭素CO2となって大気中に放出されます。
例えば、山火事のときには、木に含まれている炭素が、一気に酸素と手を結び二酸化炭素となり大気中に放出されます。人間の火葬も同じです。
呼吸も燃焼です。体内でブドウ糖(=炭素が含まれる)が、炎が出ない程度に、ゆっくりと燃焼します。その結果、二酸化炭素が吐き出されるのです。
炭素が酸素と手を離すとき(CO2 → C)

葉は光合成を行う化学工場
大気中の二酸化炭素が、酸素と炭素が離れるのは、植物が光合成を行うときです。つまり、太陽光と水を利用して、二酸化炭素からブドウ糖(炭水化物)をつくり、酸素は大気中に放出されます。
このように自らのエネルギー源や自らの体を構成する有機物(ブドウ糖、炭水化物)を自ら作ることができるのは、植物のみで、人間や動物は植物が作った有機物を摂取することで生きています。
カーボンニュートラルとは
光合成は、植物の葉で行われます。葉はブドウ糖(炭水化物)を作り出す、いわば「工場」の役割を担っています。植物は光合成(二酸化炭素を吸収して、酸素を吐き出すこと)を繰り返しながら成長します。
樹木の場合、ブドウ糖から、より複雑な炭水化物がつくられ、幹や根、枝葉をつくります。そして、幹や根に含まれる炭素は、その後、長い年月にわたり固定(貯蔵)されることになります。さらに木材になっても、ずっと固定(貯蔵)されたままです。燃やされたり、微生物に分解されたときに酸素と結びつき、二酸化炭素となり、大気中に放出されます。

100年前の出来事
炭素にしてみれば、「100年前に木の葉に吸収されて、久しぶりに大気にもどってきたよ!」という感じかもしれません。
この循環の中で炭素は、もともと大気に存在していた二酸化炭素が光合成により葉から吸収され、それが樹体をつくる細胞(有機物)となり、さらには、住宅や家具などをつくる木材となり、再び大気に戻ってきたことになります。そしてまた葉に吸収されて・・・の繰り返しで、長い期間で見れば、樹木と大気の間を炭素が循環しているだけで、大気中の炭素を増やすことも、減らすこともありません。つまり、炭素の収支はゼロ(=ニュートラル)。この安定した炭素の循環を「カーボンニュートラル」といいます。「カーボンニュートラル」は環境問題を考えるときのキーワードの一つになっています。
※カーボンニュートラルに対して、二酸化炭素(CO2)の排出量が吸収量より多い状態を「カーボンネガティブ」、二酸化炭素(CO2)の排出量が吸収量より少ない状態を「カーボンマイナス」と呼んでいます。
低炭素社会という言葉の由来
炭素がなければ、当然、二酸化炭素もつくられません。二酸化炭素は温室効果ガスのひとつで、大気中の二酸化炭素が過剰になると、温暖化をもたらします。
また、温暖化対策における「カーボンニュートラル」とは、人間活動による二酸化炭素の排出量と吸収量をつりあわせることで、炭素循環を自然状態の均衡に近づけることを意味します。
それゆえ、次の複数の言葉は環境問題の中では、(炭素の排出削減の観点から)ほぼ同等です。
炭素を減らすこと
=二酸化炭素の排出を減らすこと
=地球温暖化防止
=カーボンニュートラル
これが「低炭素社会」というキーワードの由来です。
〔参考文献・出典〕
九州農政局「炭素くん」/IPA「教育用画像素材集サイト」