カーボンオフセット

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身近になった「カーボンオフセット」

宮古島(西平安名埼)の風力発電

宮古島(西平安名埼)の風力発電。火力発電のように化石燃料を使わないで、風という自然エネルギーを利用しているため、CO2を排出することなく発電することができる。

2005年に開催されたグレンイーグルズ・サミットや、2006年のトリノオリンピックなどの国際的なイベントを通じて「カーボンオフセット」の認知度が高まっていったようです。日本でも「カーボンオフセット年賀」が発売されるなど、「カーボンオフセット」という言葉が身近になりました。「カーボンオフセット」は、企業活動の中で環境貢献のための取り組みをはじめ、商品カタログ、衣類など、身近な商品・サービスから、ホテルの宿泊プラン、結婚式まで広がってきました。

ところで「カーボンオフセット」とは何のことでしょうか? なんとなく環境に関する用語であることは、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、「カーボン」「オフセット」などカタカナ用語の組み合わせで、今ひとつ、具体的なイメージがわかない方もいらっしゃるのではないでしょうか。そもそもイベントや商品がなぜ環境と結び付くのでしょうか。インターネット等で調べてみても、「クレジット」「CDM」「CER」「VER」などの略語などとともに出てきて、容易には理解できそうもありません。

02/05

ゴミの再資源化の喩え

ゴミ減らし

以下、再資源化の喩え話です。 ある会社A社では、自社がこれまでゴミとして捨ててきたものうち、毎月30kgをリサイクル(再資源化)により、ゴミを減らそうと目標を立てました。 社員は反故紙(ほごし:印刷ミス等で不要となった紙)や新聞紙、缶や瓶をリサイクル業者に出すなどさまざまな取り組みをしましたが、精一杯頑張っても毎月20kgまでしか減らすことができませんでした。

そこで、どうしても減らせなかった残りの10kg分は、社員全員でオフィス周辺でゴミ拾いをして、再資源化できそうなものは、リサイクル業者に出すことにより、埋め合わせをすることにしました。A社の社員は、街に出て、無造作に捨てられている空きビン、ペットボトル、雑誌など、リサイクル(再資源化)可能なものを回収し、リサイクル業者さんに引き取ってもらいました。

結果として、A社内では、最善を尽くしても毎月20kgまでしか減らせませんが、近隣の街で残りの10kg分のゴミ拾い(再資源化)を継続することにより埋め合わせをしていることになるのです。広い視野(地域全体)で見れば、合計30kgのゴミを削減(リサイクル/再資源化)されたことになります。この10kg分埋め合わせが「オフセット」に相当します。これは「ゴミオフセット」といえるかも知れません。

03/05

カーボンオフセット

「カーボンオフセット」もこれと似ています。企業活動や家庭で出さざるを得ないCO2、どうしても減らせないCO2を、どこか別の取り組みで減らそうというのがカーボンオフセットです。カーボンとは炭素のことですが、具体的には二酸化炭素CO2のことです。つまり、カーボン(=二酸化炭素CO2)のオフセット(=埋めあわせ、相殺)が「カーボンオフセット」です。

04/05

カーボンオフセットの具体的な事例

ルミネの建物の写真

 

節電や屋上緑化、バイオ発電を導入をするなど、さまざまなCO2の排出削減に取り組んでいる企業も少なくありません。JR東日本のグループ会社であるショッピングセンターの「ルミネ(株式会社ルミネ)」では、社員の通勤時に鉄道やバス等を使うことにより排出する二酸化炭素(電車を動かすための電力やガソリンの燃焼により排出されるCO2)まで削減する取り組みを行っています。その内容は次のとおりです。

高知県のあるセメント工場では、日々、ボイラーで化石燃料の石炭を燃焼させて、セメントを生産しています。化石燃料は地下深くから掘り出して使われるため、大気中のCO2を増大させ、地球温暖化を進めてしまいます。そこで、そのボイラーの燃料を未利用の林地残材(=山に捨てられ、活用されていない間伐材等)に替えれば、カーボンニュートラルの観点から、二酸化炭素の排出量を削減することができます。つまり、木材を燃焼させることにより排出されるCO2はもともと大気中に含まれていたものが、光合成によって樹木に固定されていたものなので、大気中に還元されるだけです。いつかまた、森林の木々に吸収され、いつか燃焼し・・・と繰り返し(循環)なので、実質的には、大気中のCO2を増やすことはありません。

この例のように燃料を換えることにより減らすことのできたCO2量は排出権とかクレジットなどと呼ばれます。クレジットは、それを認証する機関によりCERとかVER(=どちらも「認証された(CO2)の排出削減量」※)と呼ばれ、売買することが可能です。

ルミネでは、高知県からクレジットを購入し、社員が通勤時に鉄道やバスを利用することにより排出されるCO2の相殺(カーボンオフセット)に使っています。つまり、どうしても減らせない社員の通勤時に排出されるCO2を他の取り組みで減らすことにより埋め合わせをし、とことん環境に配慮した企業活動を実現しているのです。

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火力発電を風力発電にした場合の例

仮に、火力発電による電力すべてを風力発電で替えたとした場合、CO2の排出量は25分の1になります。

カーボンオフセット

CO2排出量は、石油火力発電のCO2排出量を100とすると風力発電は4程度。96の削減量は、国連等で審査・認証されると「クレジット」となる。

ここで96の削減量は、どこかで、やむを得ず排出されるCO2の相殺に使うことができます。この排出削減量は認証機関で厳格に検証、認証されて 「排出権」とか「クレジット(CER、VER)」などと呼ばれるようになり、環境に配慮した企業活動を行うため、取引されることがあります。

※CER(Certified Emission Reduction)もVER(Verified Emission Reduction)も直訳すると「認証された(CO2の)排出削減量」です。違いは認証機関です。CERは国連が審査・認証するもので、VERは国家など取り組み団体が自主的なルールに基づいて、審査・認証するものです。最近では、J-VERが取り上げられていますが、頭の「J」はJapanの意味です。「グリーン電力証書」もVERに含まれます。CERもVERも「クレジット」と呼ばれ、取引(売買)されます。

※海外でのCO2を削減するための取り組み(プロジェクト)をCDM(Clean Development Mechanism/クリーン開発メカニズム)といいます。例として、風力発電施設(=CO2を排出しない自然エネルギーによる発電)の建設などが挙げられます。

カーボンオフセットの取り組みはさまざまですが、森林を活用した取り組みが広がれば、衰退しつつある日本の森林と林業の活性化が見込まれ、日本に元気な森林が増えて、地球温暖化を抑えることもできるのです。


〔参考文献・出典〕
財団法人 エネルギー総合工学研究所、「photolibrary」「flickr」


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