赤鷽(アカウソ) スズメ目アトリ科ウソ属

アカウソ
冬の野辺の道端で「フィッ、ヒッ、フィッ」と優しい口笛のような小鳥の声が聞こえてきます。声の主は「ウソ(鷽)」とよばれる野鳥です。不名誉な名に聞こえますが、昔は「口笛」のことを「うそ(おそ)」と言っていたことがその名の由来です。スズメよりも一回り大きく、ぽっちゃりとした風貌で、仕草もおっとりとしているため、全体に柔和な印象を受けます。灰色がかった体に、オスは美しい薔薇色の頬をもち、とても印象的な姿をしています。
日本で見られるウソの仲間は、ウソ、ベニバラウソ、アカウソの3種類で、いずれもスズメ目アトリ科のウソ属の亜種です。ウソは一年中見られる種類で、オスの頬だけが紅色をしています。アカウソは胸から腹にかけて淡い紅色が広がり、よりお腹が赤く見えることからその名で呼ばれています。頭や翼、尾は黒色で、背中は灰色がかった青色です。メスには紅色がなく、全体的に茶色っぽく、外側の尾羽に白い軸斑があるのが特徴です。もう一種のベニバラウソはさらに色が濃く、日本では稀にしか飛来しない珍しい仲間です。
アカウソは、夏期にシベリア(アムール・ウスリー・サハリンなど)の亜寒帯で繁殖します。枝や枯れ草などを使って皿状の巣を作り、一度に4個~6個産卵します。卵は約2週間で孵化し、雛はさらに2週間ほどで巣立ちます。日本には冬にだけ飛来する冬鳥で、本州より南の山地や丘陵地の針葉樹林を好んで生息します。
食性は、桜や梅などの植物の芽や種子、ガの幼虫やクモなどを好んで食べます。また、道端の枯れ草の些細な種子も、冬を生き抜くための貴重な食料となります。ウソの仲間は比較的警戒心が少ないため、鳴き声に耳を澄ませていれば、意外と近くで姿を見られることもあります。そんなとき、冬枯れの景色の中に咲いた一輪の花のように映り、寒空の下で心がぽっと温かくなるように感じられるでしょう。
福岡県の太宰府天満宮では、新年に「鷽替え」とよばれる神事が行われます。これは菅原道真公とゆかりの深い鷽にまつわるもので、木彫りのウソを毎年取り替えることで「嘘」を改めるという語呂合わせの意味を持っています。身近な野鳥であるウソが、人々の生活や信仰とも深い関わりをもってきた証の一つといえるでしょう。
林野弘済会「林野時報」/サントリーの愛鳥活動/wikipedia