森林破壊・森林減少・森林消失の原因

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森林破壊・森林消失の概要

森林は私たち人間の営みに様々な恩恵を与えてくれますが、一方では人間の営みにより森林破壊(森林消失)が起こっています。森林破壊の原因は、農地の開墾や非伝統的な焼畑農業、山火事などの災害、薪炭などの燃料や産業への木材の過剰な利用などが挙げられています。森林を消失させるような人間の営みは、古くから世界の各地でおこっています。例えば、漢や唐が都をおいた長安周辺は大量の木材が必要とされたため、森林が大量に伐採されたことが知られています。しかし、かつての森林利用は地球環境を変えてしまうほどのレベルではありませんでした。

地球上の森林の減少速度が加速したのは、文明が急進歩した19世紀以降です。特に20世紀後半以降は熱帯雨林地域を中心に森林破壊が急速に進みました。

近年では食肉生産を目的とした牧畜のための土地、人口増加による食料用の農地の割合が大きくなってきています。また、森林破壊は人間の生産活動のために起こるものではなく、政治的な理由による森林破壊も行われています。例えば、ベトナム戦争では、解放戦線(ゲリラ)の隠れ家となっていたジャングルを絶滅されるために、枯葉剤が散布され広大な森林やマングローブが失われました。

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原生林は8000年前と比較して8割が消失

WRI(世界資源研究所)の報告によると、世界の原生林(自然の力によって作られたとされる森林)は文明が始まった時期とされる8000年前に比べて、すでにその8割が消滅していると報告されています。森林は、文明の発達とともに減少の一途をたどっているのです。

原生林の変遷

 

森林減少の原因としては、次のような内容が挙げられています。

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森林破壊・森林消失の原因

人口増加と貧困に伴う森林の農地・牧草地化

森林の農地・牧草地化

 

20世紀後半、熱帯地域の開発途上国では爆発的に人口が増大しました。しかし、貧困のため急増する人口を養うだけの食料を輸入する余裕がなく、食料の増産が森林の開墾よって行われてきました。その結果、多くの森林が農地や牧草地に転換されました。これが森林減少の最大の原因となっています。

また、最近ではバイオ燃料の需要の増加により、大規模に森林を伐採して、オイルパームのプランテーションやサトウキビ、トウモロコシ、大豆などの農地への転用、牧場への転用が増加しており、これらも森林減少の一因となっています。

森林からの農地への転換は、政府の政策による転換、企業による大規模な転換、周辺住民による小規模な転換など、さまざまな状況で進められています。

このように、森林からの農地への転換は森林減少の最大の原因となっていますが、森林保護の観点から農地拡大を停止することは、人口増加による食糧問題を抱えている途上国の農業生産も停止することになり、簡単には解決できないのが現状です。

人口増加に伴う薪炭材利用の増加

燃料用木材の過剰な採取

 

日本では、ガスや電気が当たり前のように供給されていますが、世界の木材需要の約半分は燃料としての利用です。アフリカや中南米の熱帯地域では、調理などの燃料として、おもに木質燃料(蒔や炭)が使われています。家庭用エネルギーに占める木質燃料の比率はアフリカでは9割を超え、森林減少の大きな原因となっています。薪炭材(蒔や炭ための木材)の利用を大きく増大させているのは人口の急増です。さらに、貧困のため、エネルギー源は安い木材に頼らざるを得ないという事情もあります。熱効率の悪い調理用カマドが使われていることも木材の浪費につながっています。

非伝統的焼畑農法

非伝統的な焼畑農業

 

焼畑は森林を焼き払い「環境によくない農法」というイメージが広がっています。しかし「焼畑」は古代より世界的に行われてきた伝統的な農法で、その本来の手法(※)は自然と調和した「環境にやさしい農法」です。焼畑民族によって営まれている伝統的な焼畑農業は持続可能なもので、熱帯林破壊の原因ではありません。

一方、国の政策によって移住した移民などが、自然のサイクルを無視して、収奪的な火入れ開墾を無計画に大規模に行なっている現状もあります。こうした非伝統的な焼畑が熱帯林減少の原因のひとつとなっているのです。

この2つの「焼畑」を同じものとして捉えるのではなく、区別して考える必要があります。

※伝統的な焼畑農法は、森林を焼き払い、短期間の農地として利用した後、自然の回復力で森林に戻すことを繰り返す農法。一方、非伝統的な焼畑農法は、森林が回復しないうちに再び同じ場所を農地として利用するため、土地を劣化させてしまいます。

森林火災

森林火災

 

農地開発のための火入れなどの火の不始末や落雷などが原因で、森林火災が発生し、森林が消失します。森林火災は泥炭や永久凍土がむき出しになることにより、土壌から炭素が排出されることも問題になっています。

また、最近では、地球温暖化の影響で森林火災が起こっています。干ばつや猛暑などの異常気象が森林火災を多発させているのです。オーストラリアビクトリア州では、2009年2月に40万haの森林が火災で焼失しました。ロシアでは毎年2万件以上の森林火災が起こっています。他にも、アメリカカリフォルニア州、ギリシアのアテネなど、数百年かかって育った豊かな森林が火災に襲われています。

世界規模での木材消費量の増大

木材需要の増大

 

木材の需要は年々増加しています。開発途上地域での薪炭用材(燃料用木材)の増加と世界全体での産業用材(製材や合板など)の増加が目立ちます。アフリカでは人口増加により木材消費が急増し、中国では経済発展により、木材輸入量が増加しています。

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地球環境とのバランスを考慮した伐採

世界の森林面積の減少速度は1990~2000年に年平均780万haだったものが、2010~2020年には、470万haと低下しています。減少速度は鈍ってきましたが、現在でも熱帯林を中心に森林減少が続いています。その結果、東南アジアの熱帯林ではすでに二酸化炭素(CO2)の排出量が吸収量を上まわり、アマゾンの熱帯林でも、排出量が上まわったことが指摘されています(ブラジル国立宇宙研究所/2021年)。森林による地球温暖化防止の機能が失われていることになります。森林の二酸化炭素の吸収・貯蔵の役割を減退させないためにも、違法伐採の取り締まりや、違法木材の使用を禁止する国際的な取り組みが求められています。

世界の文明の進歩とともに、世界の森林は消滅していきます。もちろん、文明の進歩は悪いことではなく、それとともに森林が消滅するのは必至のことです。悪いのは、地球環境とのバランスを考えず、無計画に伐採したり、違法に伐採することです。

今は科学が進歩し、どのくらいの森林を伐採すれば、どの程度の環境負荷がかかるのかを把握できる時代です。それを無視し、単に営利目的で伐採したり、開拓したりすることは避けなければならないのです。


〔参考文献・出典〕
国際林業研究センター(The Center for International Forestry Research , CIFOR)/環境省「世界の森林を守るために」/JICA「世界の諸問題」/財団法人国際緑化推進センター「みんなに知ってほしい地球環境と森林」国土交通省北陸地方整備局 湯沢砂防 身近な環境問題「焼畑農業と森林破壊」/JATAN 「熱帯林破壊の現状」/NHK「出動 空飛ぶ消防士」/森林総合研究所「カーボンニュートラルに向けた森林の役割(2022)」


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