広葉樹材の用途

広葉樹は針葉樹と比べて、種類が多く、葉の形や性質が異なるさまざまなタイプがあります。日本のおもな広葉樹は約300種あり、そのうち特に木材としてよく使われるものは30種ほどです。広葉樹材は「Hard Wood」といわれるように一般的には材質は堅いものが多くなっていますが、樹種ごとにかなり違いがあります。そのため、建築材をはじめ適材適所で、さまざまな用途に使われます。

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住宅の資材

一般的には、柱や梁などの構造材には針葉樹のスギやヒノキが多く使われますが、古い民家や神社、仏閣では広葉樹のケヤキなども見られます。広葉樹はその堅い材質を活かして、敷居、框(かまち)、床柱などにも使われますが、最近ではフローリングなどの床材として多く使われています。

※框(かまち)…床の高さが変わる見切り部分の横木のこと。上がり框(玄関などの上がり口部分)、床框(床の間の前端)など場所により呼び名が異なります。なお、窓や障子などの周囲の細長い枠を指すこともあります。

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家具

家具としてはナラやブナ、センノキ、ニレなどがテーブル、イス、タンス、食器棚などに使われます。特に、桐(キリ)のタンスは、日本各地で伝統的工芸品として経済産業大臣から指定を受けています。

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まな板

まな板といえば、殺菌性や防カビ性の強い針葉樹のヒノキのまな板がしばしば見られます。一方、広葉樹では刃当りがよいのがホオノキ、使いやすさではヤナギが最高ともいわれています。

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合板

合板の歴史は古く、古代エジプトの時代から使われていました。当時は質の良くない板を簡単に重ねて使っていたようです。合板の長い歴史の中で、ロータリレースと呼ばれる機械が開発され、大量生産が可能になり、さらに合板自体の改良も重ねられ、難燃や防虫など機能性を持つようになりました。今では、住宅の屋根や壁、床などに使われ、住宅建築には欠かせない存在になっています。

日本の合板は、南洋材(マレーシア、インドネシアなどからの輸入材)が多くなっていますが、国産材ではシナ・カバ・セン・ブナ・ナラ等が使われます。これらを表面材料にすると白くて美しいので、内装材として使われることもあります。最近では地球環境保護の世界的な動きのなかで、広葉樹から針葉樹への合板の原材料の転換が進んでいます。

合板(天井部) 日本合板工業組合連合会「厚物合板屋根の手引き(国土交通省補助事業 木のまち・木のいえ整備促進事業)」

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広葉樹は火持ちがよいので炭として、しばしば使われます。特にウバメガシ、コナラ、クヌギが優れています。飲食店で使われることが多いのですが、バーベキューなどのアウトドアでも使われています。また、土壌に混ぜて樹木の生育に役立てたり、消臭剤にするなど、活性炭としての利用も多くなっています。

備長炭

備長炭

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器物

腕、盆、菓子器などの木地には、トチノキ、ケヤキ、ブナ、ミズメなどで、木目の美しいものや細工のしやすい材が選ばれます。

木製の食器

木製のテーブルウェア 写真:飛騨高山オークヴィレッジ

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玩具

伝統的なこけし、こまなどの木製玩具には、ミズキ、イタヤカエデなどが使われます。また、積み木には、ブナやカエデ、ナラ、サクラ、シラカバなど、私たちの身.jpgある木が使われることが多いようです。

森の動物つみき

森のどうぶつみき 写真:飛騨高山オークヴィレッジ

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バット

バット素材として、メイプルやホワイトアッシュ、合竹などが使われていますが、アオダモが硬式野球用バットの最高級材として使われます。アオダモには材質として曲げ強さ、堅さ、粘りといった性質があるためです。アオダモは北海道、本州、四国、九州などに分布し、バットの他にも家具材、器具材として利用されています。近年はバットに適した60年~70年生のアオダモ材の確保が困難になったため、代替として、大リーグで主流のバット用材であるホワイトアッシュなどが使われています。しかし、アオダモのバットは、反発力があって強靱で、ホワイト・アッシュより軽いことから、優れたバット用材とされています。

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古紙パルプに間伐材パルプを配合した用紙
写真:楽天市場

日本では、おもに製材残材を有効活用してパルプの原料にします。製材残材以外では、針葉樹よりも広葉樹を多くパルプの原料にしています。新聞用紙や包装用紙など強度が求められる紙には針葉樹、印刷用紙や筆記用紙など平滑性が求められる紙には広葉樹が適しています。和紙にはコウゾ、ミツマタがよく使われています。

なお、近年のエコロジー志向の高まりを踏まえ、古紙に間伐材パルプを配合してつくられた封筒や印刷用紙などが見られるようになりました。


〔参考文献・出典〕
林野庁「木のおはなし」


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