森林生態系における分解者(土壌動物・微生物)

生態系における「分解者」とは、生物の死骸や排出物を分解し、有機物を無機物に戻す役割をしている生物をいいます。分解者としては、微生物(菌類・細菌類)土壌動物やなどが該当し、具体的には、落ち葉などを消化する甲虫類の幼虫、腐肉にたかるウジ、ミミズなどの小動物も含まれます。

01/05

森林浄化の担い手は分解者

森林土壌(地面、林床)には、落葉・落枝、倒木、動物の排泄物、死骸などさまざまなものが、たえず供給され続けています。しかし、森林土壌には、浄化作用があるため、きれいな状態を保ってします。森林土壌の浄化は、土壌動物や微生物などの分解者が担っています。

リクガイの写真

リクガイ

02/05

土壌動物とは

土壌動物とは、生活のほとんどを土壌中で過ごす動物のことで、小さいものでは体長が0.01mmほどの原生動物から、0.2~2mmほどのダニやトビムシ、1cm~数cmのワラジムシ、ミミズやムカデなど、大きいものでは体長15cmほどになるモグラなどが含まれます。土壌動物は、土の中で生活しており、小さいため、ほとんどの人は目にすることもなく、想像し難いと思いますが、健全な温帯の森林では、片足の下に1000頭ほどのダニやトビムシがいるといわれています。

森林の土壌動物、ダニ類、トビムシ類、ワラジムシ

 

03/05

森林生態系を支える分解者「土壌動物」

ミミズ(分解者)

生態系の中での分解者としてのミミズの役割は大きい

土壌動物は植物が供給する落ち葉や枯れ枝などの有機物や微生物などを食べています。落ちて間もない落ち葉は、ミミズやワラジムシ、ヤスデなどが食べ、さらにもっと小さなダニやトビムシなどが食べて、粉々にしていきます。こうすることにより、微生物が働きやすくなり、分解が進み、植物にとって栄養豊かな土になっていきます。

さらに、土壌動物の体内を通った有機物は団粒状となって排泄され、ふかふかの土をつくっていきます。また、ミミズなどは硬い土にトンネルを掘って、土壌をふかふかに耕し、水や植物の根が通りやすくしてくれます。ミミズが掘ったトンネルは、土の中の空気の通り道となり、土の中の微生物が活発になって有機物の分解が速く進行します。

このように、土壌動物は人知れず、森林の土壌の下で黙々と分解者として、働いています。

04/05

分解は土壌生物と微生物の共同作業

土壌中の微生物

土壌中の微生物

森林土壌には、分解者として微生物(菌類・細細菌など)も多く存在しています。茶さじですくい取れるほどの1gの森林の土の中には数百万個もの微生物が生活しているといわれています。微生物は分解者としてはとても重要な役割を果たしており、土壌中で有機物の無機物にする分解のはたらきのうち9割は微生物によるものといわれています。

ただし、微生物は直接的に土壌生物は落葉・落枝、倒木、動物の排泄物、死骸などを分解するというよりは、土壌生物が細かくしてくれたものに進入する場合が多いようです。また、土壌動物が分解できないものは、糞の中にそのまま有機物として残っていますが、そこでも微生物(菌類・細菌類)が活躍します。微生物はある程度消化されたものの方が進入しやすく、土壌動物にはない分解酵素を持っているのです。他にも土壌生物の腸内には微生物がすんでいて、菌類の分解酵素を利用しているともいわれています。

このように、有機物から無機物への分解は微生物と土壌動物の共同作業で行われています。

05/05

森林土壌は腎臓に似ている

森林の地面に供給された落葉・落枝、倒木、動物の排泄物、死骸などの有機物は土壌で無機物に還元され、再び植物に吸収され、それを捕食する草食動物、肉食動物・・・というように循環します。これは、生体内では老廃物を含む血液が、腎臓でろ過されてきれいな状態に戻されて身体を再び循環することに似ています。


〔参考文献・出典〕
社団法人全国森林レクリエーション協会「森林インストラクター養成講習テキスト<森林編>」/社団法人全国林業改良普及協会「森林インストラクター入門」/ウィキペディア(Wikipedia)


このページのトップへ