森林生態系における生産者(緑色植物)

自然界で無機物から有機物を合成する生物を「生産者」とよびます。光合成を行なう緑色植物をはじめ光合成細菌なども生産者に含まれます。生態ピラミッドの土台であり、食物連鎖の出発点(栄養段階)に位置し、すべての生物が活動するエネルギーの源となっています。

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何も食べなくても成長できる生産者「植物」

すべての動物は食物を探し求め、動きまわっています。自らの食物だけでなく、子に与える食物を探し求めて、あちらこちらへと動きまわります。これは、動物が生命を維持し成長していくためには、食物が必要だからです。

ところが、草花は樹木などの植物は、じっとしていても生きることができ、成長します。

※食虫植物などはここでは例外とします。

生態系における生産者「植物」

生態系における生産者「植物」

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動植物のエネルギー源

何かが動くためには、エネルギーが必要です。身近な携帯電話やパソコン、車やバイクなど動くものはすべて、電力や燃料などのエネルギーを必要とします。

携帯電話はバッテリーがなくなれば機能しなくなり、車はガソリンがなくなれば、動かなくなります。エネルギーがなくなると動かなくなります。動かなくなったものを再び動くようにするためには、バッテリーを充電したり、ガソリンを補給したり、エネルギー補給が必要になります。

私たち人間をはじめ、動植物は動きまわったり、成長したりします。そのエネルギー源は何でしょうか。電力やガソリンではありません。「ブドウ糖」と呼ばれる物質です。私たちは摂食することにより、ブドウ糖を外から取り入れているのです。食べることは、いわば「エネルギー補給」です。

ところで、植物は何も食べません。ブドウ糖を自らの体内で生産しているからです。植物は光合成により、光と空気と水から自らのエネルギー源となるブドウ糖を作っている「生産者」なのです。そのため、植物は他の動物と違って、みかけ上、摂食しなくても、生きることができますし、成長することもできるのです。

しかし、人間や動物は、植物と違って、体内でブドウ糖を作ることができません。そのため、植物が生産したブドウ糖を外から取り入れる必要があるのです。つまり、植物が光合成によって生産したブドウ糖を食物として取り入れて、そこから活動のエネルギーを得ているのです。

草食動物は、生産者である植物を摂食することによりブドウ糖を得ている

草食動物は、生産者である植物を摂食することによりブドウ糖を得ている

すべての生命のエネルギー源は太陽

植物(生産者)は、光合成により、水と二酸化炭素からブドウ糖をつくるとき、太陽からの光のエネルギーを吸収します。その結果、ブドウ糖の中に、光のエネルギーが取り込まれ、蓄えられます。もとを辿れば、生命のエネルギー源は太陽ということになります。

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ブドウ糖はデンプンに含まれている

植物は葉で光合成を行い、ブドウ糖からデンプンを生産します。デンプンは、ブドウ糖が結合してできた物質です。

デンプンは、コメやムギ、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモなどに、多く含まれています。私たちは、食物を通じてデンプンを摂取し、そこからブドウ糖を取り出し、エネルギー源として使っているのです。

私たちが摂取したデンプンは、消化されます。その過程で、ブドウ糖が連なってできているデンプンを切って、ブドウ糖を取り出し、分解します。このとき、その中に蓄えられていたエネルギーが放出されます。そのエネルギーはすぐに使われることもありますが、からだの中に蓄えられることもあります。

ブドウ糖から得られたエネルギーは、私たちが歩いたり走ったり、活動するためのエネルギーに使われます。また、成長したり、からだを維持したりするための物質をつくることにも使われます。ブドウ糖に蓄えていたすべてのエネルギーが取り出されてしまうと、水と二酸化炭素にもどって、体の中から出て行きます。

※私たちが病気などで、食欲がなくなって、病院に行くと、点滴注射を受けることがあります。その点滴の本体は「ブドウ糖(グルコース)」です。

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生産者(植物)が肉を食べなくてもよい理由

ところで、私たちが健康に生きて、成長していくためには、ブドウ糖(デンプン)だけでは、足りません。タンパク質や脂肪やビタミンなどが必要です。そのために、私たちは肉や果物や野菜を食べます。

私たちはウシやブタやニワトリ、魚などの肉を食べます、タンパク質を摂取するためです。ただし、私たちが必要なのは、他の動物や魚のタンパク質ではなく、タンパク質の材料となっている「アミノ酸」です。私たち人間は体内でアミノ酸をつくることができないからです。

タンパク質はアミノ酸が連なってできています。私たちの体内では、取り入れたタンパク質からアミノ酸を取り出し、そのアミノ酸を再構成して自分に必要なタンパク質につくり変えています。

ところが、植物は自分に必要なアミノ酸を自ら生産することができます。根によって、地中の養分として窒素を取り込んで、肉の成分と同じアミノ酸をつくり出すことができるのです。そのため、植物は、肉を食べる必要がないのです。

※私たちが植物を栽培するとき、窒素肥料として硝酸カリウムや硝酸アンモニウムなどを土に与えます。植物たちは、それらを吸収してアミノ酸をつくり、自らに必要なタンパク質を生産します。

さらに、植物は、健康に生きて、成長していくために必要な脂肪やビタミンなども生産することができます。そのため、何も食べずにすくすくと成長することができるのです。

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すべての動物の食糧を賄う生産者

このように、植物は生物として生きて、成長するために必要な物質(ブドウ糖やデンプン、タンパク質、脂肪、ビタミンなど)を自分で生産することができます。端的にいえば、植物は動物がいなくても、生きていけるかも知れません。しかし、動物は植物がないと生きていけません。

食物連鎖の関係をたどっていくと、植物は、地球上のすべての動物の食糧(エネルギー)を賄っていることがわかります。食物連鎖の頂点に立つ私たち人間は、食糧を植物や動物に依存しています。ウシやブタやニワトリなどの動物は、植物たちのからだである葉や茎、根や実などを食べています。「肉食動物」といわれるライオンやチーターは、シマウマなどの「草食動物」の肉を食べて生きています。草食動物は、植物を食べて生きています。

食物連鎖の形態は、数多くありますが、どれも出発点は生産者である植物です。結局、すべての動物は、植物のからだを食べて生きているといえます。

このように、植物は、すべての動物の食糧(エネルギー源)をつくりだしている「生産者」なのです。


〔参考文献・出典〕
中公新書「植物はすごい(田中修 著)」/wikipedia


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