森林生態系の原動力 光合成
光合成とは
光合成(photosynthesis)とは、植物や藻類、シアノバクテリアなどの生物が、太陽光のエネルギーを利用して二酸化炭素と水から有機物(主にブドウ糖)を合成し、酸素を放出するはたらきをいいます。
この仕組みによって、地球上の食物連鎖や酸素供給が成り立っており、森林をはじめとする生態系の基盤、さらには地球全体の環境を支える根本的なプロセスとなっています。
私たちは光合成について、詳しく知る機会はあまりないと思います。しかし、科学の世界では植物の驚異的な優れた働きといわれています。
植物は何も食べなくても成長できる
植物は光合成によりブドウ糖をつくり、それをエネルギー源として生命活動を行っています。また、根からは地中の窒素やリンなどの養分を取り込み、アミノ酸を合成し、それを基にタンパク質や脂肪、ビタミンといった成長に欠かせない栄養素を自ら生み出しています。
※根から取り込む窒素やリンなどの無機養分は、それだけでは栄養になりません。光合成で得られたブドウ糖などの炭素骨格と結びつくことで、アミノ酸やタンパク質、脂肪、核酸などの複雑な有機物が合成されます。つまり、光合成は炭素を供給し、根からの養分は「窒素やリン」といった要素を供給する。両方がそろって初めて、植物は成長できるわけです。
このように植物は生命に必要な栄養素を自ら合成できるため、動物のように「食べる」ことをしなくても成長できるのです。
※人間は体内で合成できない必須アミノ酸やビタミンがあり、それらを植物などの食物から摂取する必要があります。
光合成は植物の優れた働き
植物は太陽光を浴びて光合成を行い、二酸化炭素と水からブドウ糖をつくります。これは私たちの身の回りに当たり前に存在する物質と太陽の光を利用した、極めて効率的で洗練された仕組みです。
光合成で生み出されるブドウ糖は、すべての生命のエネルギーの源となっています。科学の進歩した現代でも、この仕組みを完全に人工的に再現することは容易ではありませんでした。
しかし、近年は「人工光合成」の研究が進み、太陽光を利用して水から水素や有機物を生成する技術が実用化に向けて動いています。これは脱炭素社会の実現や再生可能エネルギーの拡大に直結する重要な研究分野となっています。
植物は数億年前から光合成を行なっており、身近に生えている雑草ですら、光合成を行なっていることは驚きです。

身近な雑草でさえ光合成を行っている
森林生態系の原動力は光合成
自動車や機械など何かが動くためには、原動力(ガソリンや電力などのエネルギー)が必要です。同様に、すべての動植物が成長・活動するためにもエネルギーが必要です。森林(生態系)では、動物や植物が成長したり、活動したり、微生物が枯死木や動物の遺体や排泄物を分解しています。森林生態系の中でも動植物をはじめ、さまざまなものが動き、活動し、変化しているため、原動力(エネルギー)が必要です。その原動力が光合成です。
植物の光合成によって生み出されたブドウ糖が、森林生態系全体のエネルギー源となっています。このブドウ糖はデンプンなどの形で蓄えられ、成長や呼吸に利用され、さらには他の生物へと受け渡されていきます。このように光合成によって生み出された「ブドウ糖」の中には太陽から得た光エネルギーが取り込まれています。「ブドウ糖」は私たち人間をはじめ、すべての生命のエネルギー源となっています。
※植物以外の生物は太陽光を直接的にエネルギー源として利用することができません。光合成は太陽エネルギーを有機物に変換して、生命活動のエネルギーを生態系に取り込む入り口といえるでしょう。
※私たちが病気で入院したりすると、しばしば点滴を打たれます。点滴を受けるときにぶら下がっている袋には、「ブドウ糖(英語名:グルコース)」と書かれています。点滴は入院中の「エネルギー補給」といえるでしょう。
また、光合成の過程で放出される酸素は、地球上の大気を維持する基盤です。近年の推計では、地球大気中の酸素の大部分は光合成によって供給されてきました。
光合成の式
光合成の基本的な化学式は次のように表されます。

この式は単純化したもの(光合成の入口と出口を1つにまとめたもの)で、実際には、最初に太陽の光エネルギーを吸収して化学変化がおこる「明反応」と次に二酸化炭素からブドウ糖を合成する「暗反応(カルビン回路)」という複雑な段階を経ています。光合成で生成されるブドウ糖には、太陽から得られたエネルギーが化学エネルギーとして蓄えられており、これがすべての生命活動の源となります。

日本木材総合情報センター「木が守る地球と暮らし」をもとに加筆
植物は葉の気孔から吸収した二酸化炭素と根から吸い上げた水を原料として、太陽エネルギーと葉緑素のはたらきでブドウ糖をつくり、酸素を放出します。葉でつくられたブドウ糖はデンプンとなり、水に溶けやすい物質となって、体の各部に運ばれて、呼吸や成長に使われたり、果実や根、茎などにたくわえられます。
現代の人間社会の原動力も光合成
植物は光合成でつくったブドウ糖を基に、タンパク質や脂質などの有機物を合成します。この有機物は植物自身の成長に使われるだけでなく、草食動物や肉食動物に受け継がれ、生態系全体にエネルギーを循環させています。
さらに、石炭や石油などの化石燃料は、数億年前の植物や動物の遺骸が長い年月をかけて変化したものです。つまり、人間社会が利用するエネルギーの多くも、元をたどれば光合成に由来しているのです。
今日の再生可能エネルギーやカーボンニュートラルへの取り組みにおいても、光合成は自然界の理想モデルとして位置づけられています。
植物の呼吸と純生産量
植物は光合成によって有機物(ブドウ糖)を生み出しますが、自らも呼吸によってそれを分解し、活動のエネルギーにしています。呼吸では酸素を取り込み、二酸化炭素を放出します。
通常、光合成でつくられる有機物量の方が呼吸による分解量を上回るため、植物は成長します。この差を「純生産量」といい、森林の成長量や地球規模の炭素吸収量を示す重要な指標とされています。

光合成ってなに?
みんなが食べるごはんは、体を動かすエネルギーになりますね。では、植物はどうやって大きくなるのでしょう? 植物はおにぎりもジュースもいりません。かわりに、光合成(こうごうせい)という力で自分の食べものをつくっています。
光合成のしくみ
光合成は、太陽の光・水・空気(にふくまれる二酸化炭素)を使って、葉っぱの中の葉緑体(ようりょくたい)であまいエネルギーのもと「ブドウ糖」をつくるはたらきです。同時に酸素も出します。人間や動物はこの酸素をすって生きています。
かんたんに言うと、二酸化炭素 + 水 + 太陽の光 → 植物のごはん(ブドウ糖) + 酸素 というしくみです。
森と地球を守る光合成
森に木がたくさん育つのは、光合成のおかげ。木は大きくなりながら二酸化炭素を吸い、酸素を出します。これが空気をきれいに保つ大切なしくみで、地球の環境を守る力にもなっています。
光合成と人間のくらし
私たちが食べるお米や野菜、果物は、みんな光合成で育ちました。じつは、むかしの植物が長い時間をかけて変わったものが石炭や石油です。つまり、人間が使うエネルギーも、もとをたどれば光合成から始まっているのです。
まとめ
- 光合成は、植物が自分のごはんをつくる力。
- つくったブドウ糖は植物のエネルギーに、出した酸素は私たちの命を支えます。
- 森や地球の環境、人間のくらしにもつながる、とても大切なしくみです。