水土保全林・森林と人との共生林・資源の循環利用林

森林整備の3区分

森林には、さまざまな機能(働き)があり、私たちは森林からさまざまな恩恵を受けています。これらの機能を最大限に発揮させるためには、人の手で適切に管理し、森林の整備を進めていく必要があります。

全国の市町村では、すべての森林を「水土保全林」「森林と人との共生林」「資源の循環利用林」の3区分に分け、それぞれに応じた森林整備を進めています(市町村森林整備計画)。


水土保全林

鳥海山麓奈曽川渓谷(写真:東北森林管理局)

良質で安全な水を安定的に供給する水源涵養の働き、山崩れや土砂流出などの山地災害を防止する働きなど、安全で安心な国民生活を守る働きを重視して、整備している森林です。土砂流出防備保安林、土砂崩壊防備保安林や水源かん養保安林が含まれています。

水土保全林に応じた森林整備の方向性としては、次の内容が挙げられます。

  • 複層林化、混交林化を進める。
  • 単層林として育てる森林は長伐期化を進め、伐採面積が小さくなるようにする。
  • 天然林では、自然の力で育て、必要に応じて苗木を植栽するなどの人手を加え、健全な森林に育つようサポートする。

森林と人との共生林

貴重な自然環境を保全したり、野生生物の棲息の場となる森林、森林レクリエーションなど森林とのふれあいの場となる森林、及び生活環境を守る働きを重視する森林です。

森林生態系保護地域や森林生物遺伝資源保存林等の保護林や、世界遺産である白神山地、屋久島が含まれており、また、自然休養林、風致探勝林等のレクリエーションの森も含まれます。森林と森との共生林に応じた森林整備の方向性としては、次の内容が挙げられます。

  • すぐれた自然景観やより快適な森林空間をつくるため、花木などを植栽したり、多様な樹種からなる森林に育てる。
  • 貴重な野生生物が棲む森林や優れた生態系をつくる森林は、適切に保護。必要に応じて植生の復元を行なう。

資源の循環利用林

資源の循環利用林

安定して木材を供給する、資源としての役割を重視して、整備している森林です。おもに木材生産を目的に植えられたスギやヒノキ、カラマツなどの人工林がこれに相当します。国民生活に必要であり、環境に対する負荷の少ない素材である木材等林産物の計画的・安定的生産を重視した森林の整備を行います。

資源の循環利用林に応じた森林整備の方向性としては、次の内容が挙げられます。

  • 適切な保育・間伐を行うとともに、年齢の高い優良大径木を持った複層林にしていきます。
  • 単層林として育てる森林は、間伐や保育を行って、健全な森林に育てます。伐採後は必ず植栽します。

  • 人工林のまわりにある天然林は、おもに自然の力で育てます。

〔参考文献・出典〕
社団法人全国林業改良普及協会「市町村森林整備計画制度のしおり」/ 林野庁/九州森林管理局/福井県