カラマツ〔唐松・落葉松〕

カラマツ〔唐松・落葉松〕

北海道、東北地方、本州中部の寒冷地帯


唐松は唐絵(中国の絵画)のマツに似ていることが名前の由来です。日本の針葉樹のうち唯一の落葉樹であることから「落葉松(ラクヨウショウ)」と書くこともあります。樹形は美しく、秋には葉を黄金色に染め、北海道や本州中部の秋の景色を美しく彩っている樹種です。晩秋には葉を落とします。

黄金色に黄葉した
秋のカラマツ林

カラマツの果球は3cmほど

短枝(=短い枝)には葉が輪を 描くようにつく

雌花は早春に葉の展開と同時に上向きに咲く

新緑も美しいカラマツ林

樹皮はうろこ状に不規則に裂けて、はがれる

最近の加工技術により、カラマツ材の欠点が克服されつつある

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カラマツ

唐松(カラマツ)の名は、短い枝に葉が束になってついている様子が中国の「唐絵」に描かれた金銭松(※)に似ていることが由来です。日本の針葉樹のうち唯一の落葉樹であり、天然では、東北地方南部、関東地方、中部地方の亜高山帯から高山帯(標高1100m~2700m)に分布しています。日当たりと岩石が細かく崩れたような通気性の良い土壌を好み、比較的夏に雨量が多く、寒さ厳しい環境に生育しています。人工林としてはスギ、ヒノキに次いで3番目に多く植林されており、北海道、長野県、岩手県に多く植えられています。寒冷地系の針葉樹としては、成長が早く、木材強度が優れていることが特徴です。しかし、木材としては、割れや狂いが出やすく、板や柱などの建築材としては使いにくい樹種とされてきました。

※金銭松(イヌカラマツ)

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時代に取り残されてしまったカラマツ

カラマツ林の写真

盛んに植林されたカラマツ

戦後、将来の需要を見込んで、日本の全国各地で、木材資源として適しているスギやヒノキなどの大規模な植林活動が行われました。木を植えることは、将来に向けて貯金することと同じと言われ、先人たちは、急峻な斜面を登り、人力で苗木を植えて育てました。

このとき、造林樹種として、北海道、長野県などでは、カラマツが選ばれました。育苗が容易で、根付きも良く、成長も速いため、大量に生産する樹種としてはとても適していました。カラマツは積極的に植林され、長野県では造林面積の半分はカラマツが占めるようになりました。同様に岩手県や山梨県でも盛んにカラマツが植林されました。

カラマツ材は、繊維が螺旋状に育つ(旋回木理を持つ)ため、割れや狂いが出やすく、当時の技術水準では、板材として使いにくい反面、硬くて丈夫なので、将来は炭鉱や工事で使う杭木や電信柱等として使用する予定でした。

そして今日、収穫期(伐採期)を迎えています。しかしながら、現在は、杭木の用途はなくなり、電信柱には、鋼材やコンクリート等の別の素材が多く使われるようになりました。せっかく成熟したカラマツも用途が限られてしまいました。ヤニを含んでいるため、パルプ材(=紙の原料)としての使用も困難です。カラマツは時代の変化とともに、当初の役割を失ってしまったのです。そのためカラマツは、たとえ伐っても需要が少なく、価格も安く採算が合わないため、放置されていたケースも少なくないようです。

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日の目が見え始めたカラマツ

長い間不遇だったカラマツですが、最近の木材の利用・加工技術の進歩等により、カラマツの欠点が克服され、積極的にカラマツを使う動きが見られるようになりました。主に合板としての用途が多いのですが、強度があり、比較的廉価で入手でき、適度な強度があるため、梱包材(さまざまな製品を輸出するときの木枠)としても使われています。また、カラマツは腐朽しにくく、適度な弾力性があるので、ガードレールなどにも使われるようになりました。

さらに、最近の木材の加工技術の向上に伴い、集成材、構造用合板や単板積層材LVL(Laminated Veneer Lumber)、構造用パネルCLT(Cross Laminated Timber)と呼ばれる材に加工されるようになり、大規模な建築材としても使われるようになっています。カラマツの価格も向上しました。北海道の堆肥舎や長野県の松本やまびこドームは地元産のカラマツを使っています。海外では台湾の博物館を信州カラマツで作り、その後に大きな地震がありましたが、博物館には災害はなかったとのことです。

カラマツを使用した木造建築物は地域の景観にとけ込み、景観を美しく保つことができるメリットもあります。

また、カラマツは、春の新緑や秋の黄葉、落葉した樹形が美しいことから、観賞用として植えられたり、盆栽にされることもあります。

松本やまびこドーム

ガードレール

インテリア

児童福祉施設

図書館

物産直売所

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尾瀬の木道はカラマツ

尾瀬の木道の写真

尾瀬の木道には、主にカラマツ材が使われている

緑豊かな山々に囲まれた尾瀬の湿原とともに景観をつくっている尾瀬の木道のほとんどがカラマツ材(※)です。昔はナラやブナが利用されていましたが、酸性の強い湿原では腐朽が激しいため、腐朽しにくいカラマツが見直されたのです。

そして10年ほど経つと木道の架け替えを行いますが、木道は10年ほどで架け替えを行いますが、木道としての役目を終えたカラマツはパルプ材としても使えるようになり、紙製品(国産材用紙)として、リサイクル利用する取り組みも始まっています。きっと戦後の拡大造林のときに植えられたカラマツも活かされていることでしょう。

※尾瀬は特別保護区であるため、現地での伐採は禁止され、近県のカラマツが使われているとのことです。

※木材は伐採されてから、一度使われて終わるのではなく、さまざまな形で段階的に利用できる(=木材のカスケード利用)の具体的な事例をここでも見ることができます。


〔参考文献・出典〕
日本文芸社「樹木」/一般社団法人 全国林業改良普及協会「林業新知識」/一般財団法人 日本木材総合情報センター「木net」