丸太の強度等級区分とA/B/C材との違い

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木造建築を支える「木材の性能評価」

近年、木造建築の分野では3階建ての集合住宅や中大規模木造施設など、より自由で多様な建築が進んでいます。これに伴い、使用する木材の「強さ」や「変形のしにくさ」などの性能を、科学的・定量的に把握する必要が生まれました。

こうしたニーズに応えるのが、構造材としての信頼性を保証する「強度等級区分(strength grading)」です。

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強度等級区分とは?

木材は自然由来の材料であり、一本一本に違いがあります。そのため、建築で使用する際には一定の基準を満たした木材であることが求められます。

その基準となるのが次の2つの方法です。

目視等級区分(Visual Grading)

節の数や大きさ、曲がり、割れなどの外観を人の目で確認して分類します。日本農林規格(JAS)では、1級・2級・3級などの等級があります。

機械等級区分(Machine Grading)

木材のヤング係数(E値)や比重など、物理的な性能を測定し、「E70」「E90」「E110」などの数値で分類します。構造計算に用いるにはこのE値が重要となります。

ヤング係数とは

ヤング係数(英語:Young's modulus)とは、材料がどれだけ「たわみにくいか」「変形しにくいか」を示す弾性の強さ(剛性)を表す数値です。

物体に力を加えると、普通は少し伸びたり縮んだりします。このとき、「どれだけ力をかけたら、どれだけ変形するか」という割合を数値で表したのがヤング係数です。

簡単に言えば…

  • ヤング係数が 大きい材料 → 硬くて変形しにくい
  • ヤング係数が 小さい材料 → 柔らかくて変形しやすい

つまり、ヤング係数が大きい=しなりにくいので「概ね」構造材に適している
と言えます。特に、建築の梁や桁など「たわみ量を抑える必要のある部材」では、ヤング係数の高い材料が使われます。

但し、ヤング係数が高ければすべての面で優秀というわけではありません。建築用材として重要な要素としては、ヤング係数(剛性)の他、強度(壊れにくさ)や耐久性、含水率などもあります。

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丸太のヤング係数はどうやって測る?

板材なら重りをのせてたわみ量を測りますが、丸太は太くて曲げにくいため、次のような方法が用いられます。

丸太の切り口をハンマーで叩き、出た音の振動周波数と重量をもとにヤング係数を求めるという「音響測定法」です。

非破壊で測定できるため、原木市場などでも活用が進んでいます。

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原木段階での等級区分のメリット

丸太の段階で強度を分類しておくことで、以下のような利点があります。

  • 同じ品質の丸太をまとめて出荷できる
  • 製材所での加工が効率化される
  • 建築設計において、信頼できる材料選定が可能になる
  • 木材の適材適所が実現し、無駄が減る
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A材・B材・C材とは?

一方で、木材業界では昔から使われている「A材」「B材」「C材」という分類もあります。これは、山林や原木市場で使われる慣習的な品質評価です。

区分 品質の目安 主な用途
A材 高品質。通直で節が少ない 梁・柱・化粧材など
B材 中品質。やや曲がりや節あり 下地材・間柱・梱包材など
C材 低品質。割れや腐れが目立つ 薪・チップ・パルプなど

この分類は経験則や感覚に基づくものであり、科学的な性能評価(ヤング係数など)とは一致しないことがある点に注意が必要です。

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両者の違いと役割

A/B/C材は、山林や原木市場での用途判断に用いられます。一方、強度等級区分は建築用材としての信頼性を保証するために必要不可欠な評価基準です。

下流の建築現場では、構造計算を行うために「E90以上の材料を使用」などといった具体的な数値基準が求められるため、ヤング係数による区分が不可欠です。

最近では、山元でA/B/C分類とあわせてヤング係数を測定し、主観的評価と科学的評価を組み合わせる動きも進んでいます。

木材の強度等級区分は、安全で高品質な木造建築を支える基盤技術です。丸太の段階で性能を把握することにより、流通や製材、建築のすべてのプロセスがスムーズになります。

A材・B材・C材という慣習的な分類も依然として重要ですが、今後はヤング係数などの数値情報と組み合わせることで、より合理的で効率的な木材利用が可能になるでしょう。


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