人工林と天然林
人工林と天然林
日本の森林は、その成り立ち(成立過程)によって、主に「人工林(育成林)」と「天然林」の2つに分類されます。
人工林とは、人が木材生産を目的として種を播いたり苗木を植えて育てている森林です。育成のために間伐などの手入れが行われていることから、「育成林」とも呼ばれます。現在、日本の森林面積の約4割が人工林です。
一方、天然林は自然の力によって芽生え、育ち、森として成立した森林です。日本では、およそ森林面積の半分が天然林に該当します。
また、これら以外に「無立木地・竹林」と分類される森林が約1割存在します。

日本の森林区分(人工林・天然林)のグラフ
人工林は1,000万ha、 ほとんどが針葉樹林

人工林(育成林)は、いわば「木の畑」
日本の森林面積は約2,500万ヘクタール。そのうち約4割にあたる約1,000万ヘクタールが人工林です。人工林は、木材生産を目的に人の手で育てられている森林で、いわば「木の畑」とも言えます。苗木の植栽から伐採まで、下草刈り、間伐、枝打ちなど、丁寧に管理しながら育てます。
日本の人工林の大部分は、スギやヒノキ、カラマツ、アカマツ、クロマツ、エゾマツ、トドマツなど、比較的成長が早く建築用途に適した針葉樹が中心です。
これらの樹木の多くは、戦後の復興期から高度経済成長期にかけて、荒廃した国土の再生や水源涵養、建築材の安定供給を目的に盛んに植えられました。
現在では、人工林の多くが植栽から30~50年を経過し、木材としての収穫期を迎えています。
※水源涵養とは、雨や雪などの降水を森林が保持(保水)し、ゆっくりと流出させることを言います。そのため、洪水等の災害が減るとともに、地下を通過してゆっくりとろ過されて流出するため、ミネラル分を含んだ、いわゆる「おいしい水」をつくります。

人工林と天然林の面積内訳
天然林は1,300万ha、 ほとんどが広葉樹林

天然林〔常緑広葉樹林〕
日本の森林のうち、約1,300万ヘクタール(全体の約半分)は、自然の力で生まれ、育ち、成立した「天然林(※1)」です。これらは、里山や神社の森(鎮守の森)のように身近な存在から、人がほとんど立ち入らない奥山まで広く分布しています。天然林の多くは、ブナやナラなどの広葉樹からなる森林です。
全く人の手が入っていない「原生林(※2)」は、現在ではほとんど残っていませんが、屋久島・白神山地・知床・小笠原諸島などの一部が、貴重な原生林として世界遺産(自然遺産)に登録されています。
※1:「天然生林」という言葉もあります。伐採や山火事、山崩れなどにより、一度消滅した森林が、再び森林に戻る段階(二次遷移の途中段階)にある森林のこと。また、天然林の中でも、幼木が健全に育つように保育作業を行った森林や自然の力で次世代の木が種子などから育つ過程を補助する作業(天然更新補助作業)を行った森林も一般に「天然生林」と呼んでいます。
※2:天然林の中には、人の手が入っていないか、長い間にわたって人手の入った痕跡のない(奥山にあるような)森林があります。中でも、極相段階に達した森林を一般に「原生林」と呼びます。極相段階とは、自然状態で長期間安定している森林で、いわば「完成した森林」の姿と言えます。
※用語の使い方には揺れがあり、「天然林」「天然生林」「原生林」は、学術的・行政的な文脈や目的により意味が異なることがあります。

森林には2つのタイプがあるよ。一つは、木材を育てて使うために人が育てている「育成林(人工林)」。もう一つは、自然の力だけで育った「天然林」だよ。
「育成林」では、人が苗を植えたり、木の間引き(間伐)をしたりして木を育てているんだ。そして、大きく育ったら木材として使うために伐採するんだ。これは「木の畑」ともいえるんだよ。
「天然林」は自然に育った森で、世界遺産や自然公園として守られているところもあるよ。だから、特に理由がない限りは木が大きく成長しても伐ることはないんだ。だけど、山火事や台風、害虫などから森林を守るために、ときには人の手を入れることも大切なんだ。

森林は、地球温暖化を防いだり、洪水や土砂災害を防いだり、動植物のすみかになったり、人々のいこいの場所になったり、いろいろな働きをしているよ。その中で、人工林(育成林)は「木材」を生産する役目もあるんだ。
だから育成林は、「木の畑」として、木を育てて伐って使うための森林なんだ。お米や野菜と同じように、木も大きく育ったら収穫するんだよ。
〔参考文献・出典〕
林野庁「森林・林業白書・平成21年版」/北海道立理科教育センターのホームページ/一般社団法人日本森林技術協会「緑のキーワード」/webio辞書/林野庁「林野(2014.1 No.82)」