日本の森林の高齢化と世代交代 育成林 人工林

日本の森林も日本の社会と同じように「高齢化、少子化」とも言える状況が進行。若い木が少なく、高齢な木が多くあります。

木を伐って使うことは環境破壊と思っている人も多いよね。でも、日本の森林には「保護すべき森林」の他に「木材を使うために育てて、成長したら収穫する森林(=木の畑)」があるんだ。

今の日本では、木の畑で育てた多くの木が成熟して、収穫すべき時期になっているんだ。でも、成熟した木が使われないまま放置されいる森林も目立つようになっているんだ。もったいないよね。さらに悪いことに、放置された森林は荒れて、山崩れやがけ崩れなどの土砂災害が起きやすくなっているんだ。収穫すべき木は、伐って、使って、伐ったところに若い苗木を植えて、育てることで、日本の森林は元気になるんだよ。

日本の森林の高齢化と世代交代

日本の森林面積は過去40年間増減なし

日本の森林は、国土の約7割(66%)を占めています。日本の森林面積は約2500万haで、過去40年間森林面積の増減はありません。

一方、森林蓄積は増え続けており、過去40年間で2.3倍に増えています。特に育成林(=人工林)では約5倍に増大しています。森林蓄積とは、森林の木々の幹の体積のことで、日本の森林資源の量を表す目安になります。つまり、日本の森林資源量が毎年増加しているということになります。


どれだけの森林資源を使っているのか?

それでは、日本の森林資源はどれだけ使われているのでしょうか。次のグラフは、各国の森林蓄積(森林資源)とその伐採率です。

自国の森林資源に対する年間伐採量

データ:「なぜ、いま木の建築なのか(学芸出版社)有馬孝禮 著」OECD加盟国の森林蓄積量に対する年間伐採量の比率

日本は他国と比べて自国の森林資源を使っていないことがわかります。しかも、日本で年間に利用する木材のうち7割以上は輸入材です。


高齢化が進む日本の森林(人工林の齢級別面積)

次の育成林(人工林)の齢級別面積(齢級別面積)は、昭和60年と平成28年と比較したものです。分布の形がほぼ変わらず、ほぼ同じ形でスライドしています。

高齢化が進む日本の森林 育成林(人工林)の齢級別面積(林齢別面積)のグラフ

データ:森林・林業白書(林野庁)

平成28年の分布をみると、若齢の森林が少なく、10齢級(46年生)以上の主伐期(収穫適齢期)を迎えている森林の割合が半分以上(20齢級までカウントした場合65%)を占めています。日本の豊富な森林資源が十分に活用されていないことがわかります。日本の森林はいわば「少子高齢化」です。林業の観点では、高齢化した大径木は、住宅用木材としては、太すぎて製材が難しいため、用途が少なく、価格が下がり、伐っても採算がとれないため、伐られないまま残されています。また、木材利用の持続可能性(サステナブル)や温暖化防止の観点からも、この状態は好ましい状態ではありません。

※齢級とは、林齢を5年単位でくくって森林の年齢を表現したものです。森林に苗木を植栽した年を1年生として、1~5年生を「1齢級」と数えます。6~10年生を2齢級、11~15年生を3齢級…のように表します。そのため、樹木が芽生えてから経過した年数を表す樹齢とは異なります。


次世代に森林資源を残すためには?

日本の森林の少子高齢化が好ましくない1つめの理由は、次世代に日本の森林資源を残すことができなくなるからです。

日本は国土面積の7割が森林で、国内でのこれ以上の植林には限界があります。森林資源を次世代を残すためには、成熟した育成林の木を伐採して資源として有効活用するとともに、伐採地には若い木を植えることで、はじめて、資源としての世代交代が成立し、持続可能な森林資源となるのです。

森林は、伐採しても、その後に植林して適切に管理すれば、次の世代に残すことができる持続可能な資源です。今、伐って、植えないと私たちの次の世代に森林資源を残すことが難しくなるでしょう。


若い木を植えることは温暖化防止にも貢献

日本の森林の少子高齢化が好ましくない2つめの理由は、森林によるCO2吸収量が減少するからです。森林の持つ温暖化防止機能が十分に発揮されないからです。高齢な木よりも若い木(若齢木)の方が成長が盛んなため、温室効果ガスのCO2をより多く吸収します。そのため、成熟期の木を伐採し、若い木を植えることは地球温暖化防止にもつながります。温暖化防止に向けた森林への期待は大きく、京都議定書の第一約束期間には、CO2をはじめとした日本の温室効果ガスの排出削減目標の3分2は森林が担っていました。今後の温暖化防止対策でも、森林は大きな役割を担うことでしょう。次のグラフは森林によるCO2吸収量と林齢別の炭素吸収量を表したものです。

森林による二酸化炭素吸収量のグラフ
樹種別,林齢別の炭素吸収量のグラフ

ところで、伐採した木材は住宅や家具、日用品などに姿を変えてもCO2は炭素の形で木材の中に固定されます。つまり、それらを使い続けているうちは、大気中のCO2を減らしていることになります。木材は言わば「炭素の缶詰」です。伐採地に若い木を植えれば、資源の循環が始まると同時に温暖化防止にもつながるのです。


守るべき森林と使うべき森林

地球上には、生態系を維持し保護する為に守るべき森林があります。それと同時に、持続可能な資源(使っても未来に残すことが可能な資源)として木材を利用するために、常に再生、更新しなければならない森林もあります。これら二つの森林をしっかりと区別して考えることが大切です。

今の日本では、林業離れが進み、森林が放置され、荒廃している森林が目立つようになりました。地球環境保全のためにも森林資源を循環させるために育成林(人工林)を適切に伐採、利用、植林することが必要とされています。