国有林、公有林、私有林 ― 森林を所有者から見る

森林には必ず所有者がいる
日本は国土の約3分の2を森林が占める、世界でも有数の森林国です。山歩きやハイキングをしていると、森林は誰のものでもない自然のように感じることがありますが、実際にはほとんどの森林に所有者や管理主体があります。
森林を所有者の違いから大きく分けると、「国有林」と「民有林」に区分されます。さらに民有林は、都道府県や市町村などが所有する「公有林」と、個人や企業などが所有する「私有林」に分けられます。
| 区分 | 主な所有者 | 面積 | 森林全体に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 国有林 | 国 | 約766万ha | 約31% |
| 公有林 | 都道府県・市町村など | 約301万ha | 約12% |
| 私有林 | 個人・企業・寺社など | 約1,436万ha | 約57% |
| 合計 | ― | 約2,502万ha | 100% |
※面積は林野庁「森林・林業白書」等による。集計方法や基準時点によって数値が若干異なる場合があります。
つまり、日本の森林の約7割は民有林であり、その中でも私有林が森林全体の半分以上を占めています。

所有者別森林面積
国有林―国が管理する「国民の森林」
国が所有する森林を「国有林」といいます。国有林野は約758万ha(国有林全体では統計上約766万ha)あり、日本の森林面積のおよそ3割を占めています。
国有林野の多くは、奥地の脊梁山地や河川の上流にあたる水源地域などに分布しています。そのため、単に木材を生産する場所というだけではなく、国土の保全、水源の涵養、土砂災害の防止・軽減、地球温暖化の防止、生物多様性の保全など、私たちの暮らしを支える重要な役割を担っています。
また、国有林には人工林だけでなく、原生的な天然林を含む多様な森林があります。希少な野生動植物の生育・生息地となっている森林も多く、「保護林」や「緑の回廊」などの制度によって森林生態系や生物多様性を守る取り組みも行われています。
一方、高尾山や嵐山など、都市の近くにある国有林もあります。自然観察、登山、森林浴など、国民が森林とふれあう場所として利用されている森林も少なくありません。
国有林野は重要な国民共通の財産であることから、林野庁では「国民の森林(もり)」として、公益的機能を重視した管理・経営を行っています。
民有林―公有林と私有林
国有林以外の森林を「民有林」といい、日本の森林の約7割、約1,737万haを占めています。
「民有林」という言葉から、個人が所有する森林だけを想像しがちですが、民有林には地方公共団体などが所有する「公有林」も含まれています。つまり、民有林は「公有林」と「私有林」に大別されます。
公有林
都道府県、市町村、財産区など、地方公共団体等が所有する森林が「公有林」です。全国に約301万haあり、日本の森林全体の約12%を占めています。
公有林には、水源の保全、災害防止、自然環境の保全、地域住民の憩いの場など、地域の暮らしを支える役割を持つ森林が多くあります。また、地域によっては林業経営を行い、木材を生産している公有林もあります。
私有林
個人、企業、寺社、各種法人などが所有する森林が「私有林」です。全国に約1,436万haあり、日本の森林全体の約57%を占めます。
日本の森林の半分以上が私有林であることから、森林を適切に整備し、林業を持続させていくためには、私有林をどのように管理していくかが非常に重要です。
一方、所有者の高齢化や世代交代、森林所有の細分化、境界が明確でない森林など、森林管理を難しくする問題もあります。そのため、森林組合や林業事業体への施業の集約化、森林経営管理制度などを通じて、森林所有者だけに負担を集中させない森林管理の仕組みづくりが進められています。
社有林と「企業の森」は同じではない
私有林のうち、企業が自ら所有している森林は一般に「社有林」と呼ばれます。
林業・木材・住宅など森林と関係の深い企業の中には、木材資源の確保や持続可能な森林経営を目的として、大規模な社有林を長期間にわたって管理している企業があります。一方、近年では、生物多様性の保全、脱炭素、水源涵養、環境教育、地域貢献などを目的に森林に関わる企業も増えています。
ここで注意したいのが、「企業の森」と呼ばれる森林のすべてを、その企業が所有しているわけではないという点です。
企業が森林を所有する「社有林」のほか、国や自治体、森林所有者などと協定を結び、企業が森林整備の費用を支援したり、従業員が植樹、間伐、下草刈りなどに参加したりする活動も広く「企業の森づくり」と呼ばれています。
つまり現在の「企業の森」は、森林の「所有」という枠を超えて、企業が森林の保全・利用・再生に継続的に関わる取り組みへと広がっています。
全国に広がる「企業の森づくり」
企業による森林との関わり方はさまざまです。木材生産を目的として森林を経営する企業もあれば、水源保全、生物多様性の保全、社員教育、地域交流などを目的として森林づくりに取り組む企業もあります。
代表的な取り組みには、次のようなものがあります。
- 東京ガスの森(長野県御代田町・194ha)― カラマツ林を中心とした社有林。森林管理、生物多様性保全、環境教育などに活用されています。
- JTの森 ― 全国各地で森林を一定期間借り受けるなどして森林整備を支援。森林組合や地域住民と連携し、従業員による森林保全活動も行っています。
- トヨタの森(愛知県豊田市・45ha)― コナラやアベマキなどからなる里山で、森林整備、生物多様性保全、環境学習などが行われています。
- 東京電力・尾瀬戸倉山林(群馬県・約9,100ha)― 尾瀬国立公園に隣接する大規模な森林で、水源涵養や尾瀬の自然を守る緩衝地帯として重要な役割を担っています。
- ニッセイの森 ― 47都道府県211カ所、約477haに広がり、植樹、育樹、森林環境教育などが行われています。
- 住友林業の社有林 ― 北海道、本州、四国、九州に約4.8万haの社有林を管理し、木材生産と森林の公益的機能、生物多様性などに配慮した森林経営を行っています。
- 住友林業 富士山「まなびの森」(静岡県富士宮市・約90ha)― 台風被害を受けた国有林を舞台に、1998年から100年を見据えた自然林再生に取り組んでいます。
- キリンの水源の森活動 ― 工場の水源地を守ることを目的として、自治体などと協定を結び、全国各地で植樹、下草刈り、枝打ち、間伐などを行っています。
- ENEOSの森 ― 地方自治体や国土緑化推進機構などと連携し、全国各地で間伐、下草刈り、植樹、自然観察などの森林保全活動を行っています。
このような企業の森づくりでは、森林を整備することそのものに加え、従業員や家族の森林体験、子どもたちへの環境教育、地域住民との交流など、森林を通じてさまざまな社会的価値を生み出すことが重視されるようになっています。
企業の森に求められる役割も変化している
かつて企業と森林の関係は、「木材を生産するための森林」や「社会貢献として植林する森林」という側面が中心でした。しかし現在では、その役割はさらに広がっています。
気候変動への対応として森林による二酸化炭素の吸収・固定が注目されるほか、生物多様性の保全、水源涵養、災害に強い森林づくり、地域社会との連携なども重要なテーマになっています。
特に近年は、企業が生物多様性の保全や自然資本に配慮した経営を進める動きが広がっています。「東京ガスの森」や「トヨタの森」のように、生物多様性の保全に貢献する区域として「自然共生サイト」に認定される企業の森林も現れています。
森林を単に「所有する財産」として見るのではなく、社会全体で守り、育て、その価値を次の世代へつないでいく場所として捉える考え方が広がっているといえるでしょう。
学校が関わる森林「学校林」
学校が保有したり、契約等によって継続的に利用したりして、教育活動に活用している森林を「学校林」と呼びます。
林野庁によると、学校林を保有する小学校・中学校・高等学校は全国で約2,200校あり、その面積は合計約1.6万haとなっています。
学校林には、学校が基本財産などとして所有している森林のほか、国有林や民有林を学校教育の場として利用しているものなど、さまざまな形態があります。
学校林では、植栽、下刈り、枝打ちなどの森林整備体験をはじめ、樹木や昆虫の観察、森林の働きについての学習、木工体験などが行われています。森林を教室として利用することで、子どもたちは教科書だけでは分からない森林の姿や、木が育つまでに長い年月が必要であることを実感することができます。
また、学校林から生産された木材を、学校の机、椅子、書棚などに利用したり、木工教材や学校施設の整備に活用したりする例もあります。
学校林は、森林・林業への理解を深める「森林環境教育」の場であるとともに、地域の森林と学校、子どもたちをつなぐ大切な役割を担っています。
森林は「誰のものか」と「どのように守るか」
森林を所有者という視点から見ると、国有林、公有林、私有林という違いがあります。しかし、森林が生み出す水、きれいな空気、木材、災害防止、生物多様性、景観などの恩恵は、森林所有者だけが受けるものではありません。
私有林であっても、その森林が水を蓄え、土砂の流出を防ぎ、二酸化炭素を吸収する働きは、地域社会や社会全体に恩恵をもたらします。反対に、国有林であっても、地域の林業や木材産業との連携なしに森林を持続的に管理していくことはできません。
そのため、これからの森林を考えるときには、「この森林は誰のものなのか」という所有の視点だけでなく、「誰が管理し、誰が利用し、どのように次の世代へ引き継いでいくのか」という視点も重要になっています。
国、地方公共団体、森林所有者、林業関係者、企業、学校、地域住民など、さまざまな主体が森林に関わりながら、日本の森林を守り、育て、利用していくことが求められています。

森って、だれのもの?
山や森へ遊びに行くと、広い森がずっと続いていて、「森って、だれのものなんだろう?」と思うことがあります。
じつは、日本の森林にはほとんどの場合、きちんと持ち主がいます。国が持っている森もあれば、県や市町村が持っている森、個人や会社が持っている森もあります。
森は、持ち主によって大きく「国有林」と「民有林」に分けられます。そして民有林は、さらに「公有林」と「私有林」に分けられます。
国が持っている森が「国有林」
国が持っている森林を「国有林」といいます。
国有林は、山の奥や川の上流などに多くあります。こうした森林は、雨水をたくわえたり、土砂が流れ出すのを防いだり、生き物のすみかになったりしています。
つまり、国有林は木を育てるだけの場所ではありません。私たちの暮らしを守るためにも、とても大切な森林です。
日本の森林のおよそ3割が国有林です。
県や市町村が持っている森が「公有林」
都道府県や市町村などが持っている森林を「公有林」といいます。
たとえば、町の水源を守るための森や、地域の人が自然に親しむための森などがあります。
公有林は、その地域に住む人たちの暮らしを支える森林ともいえるでしょう。
個人や会社が持っている森が「私有林」
個人や会社、寺や神社などが持っている森林を「私有林」といいます。
日本では、この私有林がいちばん多く、森林全体の半分以上を占めています。
「森を個人が持っているの?」と驚くかもしれませんが、昔から家の財産として山や森林を受け継いできた人もたくさんいます。
会社が持っている森は「社有林」と呼ばれることもあります。
会社が森を守ることもある
最近では、会社が森を持つだけでなく、森を守る活動に参加することも増えています。
木を植えたり、混みすぎた木を切って森を元気にしたり、社員や家族が森林体験をしたりします。
こうした取り組みは「企業の森づくり」と呼ばれています。
会社が自分で持っていない森でも、地域や森林の持ち主と協力して森を整備することがあります。
学校にも「学校林」がある
学校が持っていたり、学習に使っていたりする森林は「学校林」と呼ばれます。
学校林では、木を植えたり、落ち葉を集めたり、昆虫や植物を観察したりします。
教室の中で本を読むだけではなく、実際の森の中で学べるところが学校林の大きな特徴です。
森は持ち主だけのもの?
森林には持ち主がいます。でも、森の働きは持ち主だけのためにあるわけではありません。
森林は、水をたくわえ、空気をきれいにし、二酸化炭素を吸収し、土砂災害を防ぎ、たくさんの生き物を育てています。
私有林であっても、その森が元気であることは、周りの町や私たちの暮らしにも関係しています。
だから森林は、「だれのものか」だけでなく、「だれが守り、どうやって未来へ残していくのか」を考えることが大切なのです。
森を歩くときに考えてみよう
次に森林へ遊びに行ったときは、ちょっとだけ考えてみてください。
「この森は国有林かな?」「市や町が持っているのかな?」「だれかの私有林なのかな?」
いつも何気なく見ていた森も、持ち主や管理している人のことを知ると、少し違って見えてくるかもしれません。
そして、森を歩くときには、木を傷つけたり、植物を勝手に持ち帰ったりせず、その森を大切に利用することも忘れないようにしましょう。
