桜(サクラ) 春の象徴 ソメイヨシノ

日本の春の象徴である桜。日本の風景に馴染み、日本人の心の奥深くまで溶けこんでいます。

日本の春の象徴「桜」

桜は日本の春の象徴、文化や旅立ちの象徴となっています。学校や大きな駅の近くの公園などに植えられていますし、地名や人名、会社名、学校名や校章などにも多く「桜」が使われています。皆さんも家族や友達と桜をバックに写真を撮ったなど、それぞれの胸に思い出があるのではないでしょうか。

桜は日本各地の風景に溶けこんでいるとともに、日本人の心の奥深くまで、溶けこんでいるようです。

日本の春の象徴「桜」

日本の風景に溶けこむ「桜」(福島県花見山公園)


サクラは、何故こんなにも品種が多いのか

日本には非常に多くの桜(サクラ)の品種があります。その数は300~400種以上。世界各国にある桜の品種のうち、日本にない桜はないと言われるほどです。日本は桜の宝庫でなのです。

多摩森林科学園のサクラ保存林には、全国から収集した約250種、1500本の桜が植えられています。2月下旬から5月上旬にかけて順次見頃を迎えます

日本には、もともとヤマザクラやオオシマザクラ、エドヒガンなど数品種しかありませんでした。日本で桜の品種が多くなったのは、古くから日本人がいろいろな掛けあわせをしたからです。例えば、ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの交配により生まれたものです。

また日本人は昔からサクラを愛し、山で珍しいサクラを見かけると、持ち帰って栽培したようです。さらにサクラは異なる品種を掛けあわせることができる性質も、品種の増大に拍車がかかりました。

このように日本人はサクラの性質を利用して、さまざまな品種を誕生させてきたのです。言わば無名の育種家たちの趣味・興味の成果なのです。その意味では、サクラは「日本の文化の象徴」とも言えるでしょう。


ソメイヨシノが一斉に咲く理由

ところで、サクラと言えば「ソメイヨシノ」を指すことが一般的なくらい、ソメイヨシノは多く植えられています。そのルーツは、江戸の植木屋さんが、交配により育てたたった1本のサクラでした。サクラには「自家不和合性」という性質があり、ソメイヨシノどうしでは交配できません。また、他のサクラと交配した場合、他のサクラの遺伝子が入ってくるため、ソメイヨシノのような優れた形質は受け継ぐことはできないのです。つまり、ソメイヨシノでなくなってしまうわけです。

そのため、ソメイヨシノは、人の手を介した接木や挿し木などで増やす方法以外にはありません。その意味では、ソメイヨシノは「人との共存を選んだサクラ」と言えでしょう。接木や挿し木などで育てると遺伝子が同じ、言わば「クローン」になります。そして、遺伝子が同じなら、環境条件が整えば一斉に咲くことになります。そのおかげで、私たちは満開のサクラが一斉に咲き乱れる美しい景色を見ることができるのです。

一斉に咲くソメイヨシノ(角館 桧木内川)

特定の環境条件になると一斉に咲くソメイヨシノ(角館 桧木内川)


温暖化が進むと、桜は・・・

桜は、夏に次の春に咲く花芽をつけます。その後、それ以上は成長しないように「休眠状態」に入ります。夏から秋となり、そして冬に気温が3℃から10℃の状態に60日程度さらされると、休眠から覚めて、成長をはじめます。いわゆる「休眠打破」です。暖冬や寒冬では、休眠打破が中途半端となるのです。例えると「ねぼけまなこ」のような状態。狂い咲きをしたり、咲かなかったりという現象が起こるといわれています。

ところで、温暖化が進むと桜の開花はどうなるのでしょうか。観測史上最も暖冬だった2007年は、全国的に開花が早まり、南九州や八丈島などの暖地では、極端に開花が遅れました。

九州大学の伊藤久徳教授がIPCCの報告をもとに、桜の開花のシュミレーションを行ったところ、今世紀末には、東北地方で開花が2~3週間早まり、九州などの温暖な地域では、1~2週間遅くなる。また、種子島や鹿児島西部では、桜は全く開花せず、九州・四国の一部の地域や、長崎県や静岡県では、開花しても満開にはならないと予想されました。

日本の春の象徴である「桜」。そして、日本人の心に深く溶け込んでいる「桜」。気候変動により、桜が咲かなかったり、狂い咲きをすることは、とても残念なことではないでしょうか。美しい自然や日本の四季を守れるよう、地球温暖化をはじめとする環境に対する取組みがさらに活発化していくことを願っています。