森林浴と森林セラピー

森林浴・森林セラピー

 

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森林浴

森林浴とは、ハイキングやトレッキング、登山など、森林を散策するなど、森林環境に身を置くことにより、清々しい感覚や爽快感、癒やしなどを得ることです。

森林を歩くと、清々しい感覚とともに。精神的にも安心感が得られ、ウォーキング等の運動よるカロリー消化も相まって、食欲も旺盛になるようです。森林が心身にもたらす癒やし効果は、以前から経験的に知られていました。

森で清々しく感じるのは、主に「森の空気」によるものです。森には、樹木が発散する「フィトンチッド」と呼ばれる揮発性の芳香物質(テルペン類など)が満ちているのです。フィトンチッドは、空気中の雑菌類などを殺しますが、人間にとっては有益です。ストレスを解消し、心身ともにリラックスさせてくれることが知られています。人が森の中でフィトンチッドに満たされた新鮮な空気を浴びながら、呼吸すると、血液が浄化され、新陳代謝が活発になるため、身体の中の老廃物が排出されやすくなります。すると、抵抗力も強くなり、人間の免疫機能が活性化し、人間みずからの力で病気や怪我などを治す自然治癒力が高まることが科学的に解明されてきました。

※「フィトンチッド」を命名したのは、旧ソ連のレニングラード大学のB.Pトーキン博士です。語源は「フィトン(植物)がチッド(殺す)」。つまり、空気中の雑菌類などを殺し、空気を浄化する働きがあり、森林はいつも新鮮な空気で満たされているのです

森林環境(ブナ林)と都市環境における唾液中のストレスホルモンの濃度比較

森林環境(ブナ林)と都市環境における
唾液中のストレスホルモンの濃度比較
資料:独立行政法人森林総合研究所/林野庁「RINYA No.82」

「森林浴」という言葉は、1982年に林野庁(当時の林野庁長官・秋山智英氏)により提唱されたものです。林野庁が「健康・保養に日本の森林を活用しよう」と提唱したとき、「森林浴」というキャッチコピーが使われたのです。その後、マスコミ等で「森林浴は健康に良い」ということで話題となりました。そして「森林浴ブーム」も起こり、「森林浴」は、よく知られる言葉となりました。

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森林セラピー

森林セラピーとは、森林が人間の及ぼす良い効果(爽快感や癒やしなど)を医学的見地から最大限に引き出すことを目的とした森林浴のことです。つまり、医学的(科学的)に解明されたの森林浴の効果を最大限に活かすのが森林セラピーです。

「森林セラピー」という言葉は「森林浴」が提唱されてから22年後の2004年にが提唱されました。「森林浴」は昭和に始まりましたが、「森林セラピー」は「現代の森林浴(進化した森林浴)」といえるかもしれません。

かつて、森林浴が提唱されたときには、森林のもつ「癒し効果」を活かして、健康増進やリハビリテーションに役立てる「森林療法」が注目を集めました。しかし、森林浴の医学的な解明が進んでいなかったため、森林療法は確立されませんでした。

そこで、経験的に知られている森林浴による効果をより医学的に解明して、心と身体の健康づくり、予防医療などに積極的に活用していこうという取り組みを行うため、平成16年3月に森林セラピー研究会(特定非営利活動法人 森林セラピーソサエティ)が設立されました。そして、森林の香り、音、風景などが、子ども、健常者、高齢者、ハンディキャップ者などの生理的、心理的効果に及ぼす影響を医学的に検証する取り組みが行われ、森林浴の効果は感覚的なものではなく、医学的にも心身に良い影響を与えることが解明されてきました。

今では、全国の森林のうち、約65箇所が「森林セラピー基地」や「森林セラピーロード」として認定されています。これらは、生理的実験、心理的実験、物理的実験により、森林の癒やしの効果が確認された森林です。「森林セラピー基地」や「森林セラピーロード」では、訪れる人々のために健康増進やリラックスを目的とする「森林セラピープログラム」が用意されており、森林ウォーキングをはじめ、さまざまな効果的な森林浴のプログラム「森林セラピー」を楽しむことができるようになりました。

全国の森林セラピーの森

 


〔参考文献・出典〕
特定非営利活動法人森林セラピーソサエティ「森林セラピー総合サイト」/株式会社ヘルスクリニック/林野庁「RINYA No.82」


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