山菜

春の食材といえば「山菜」をイメージされる方も多いのではないでしょうか。ここでは美味しい山菜の魅力をご紹介します。

森の恵み「山菜」

古来より日本人の生活に密接に関わってきた山菜

残雪とフキノトウ/新潟県銀山平の写真

残雪とフキノトウ/新潟県銀山平

山菜とは、山に自生している植物のなかで食用に適しているものの総称です。旬の山菜は季節の訪れを告げる食材です。俳句でも多くの山菜の名が季語になっており、「ふきのとう」「たらのめ」、「うど」などは春の季語となっています。

山菜の天ぷらの写真

山菜の天ぷら

日本人が山菜や野草を食べる習慣は、縄文時代から続いています。特に、山村や農村の生活には欠かせない食材として様々な種類が食されてきました。その数は280種以上ともいわれています。また、四季折々の季節感を表す食材として、七草粥などの行事食としても用いられてきました。さらに、乾燥や塩蔵などの保存方法が工夫され、飢饉や非常時の食料としても利用されてきました。山菜は、古来より日本人の生活に密接に関わってきており、日本の風土が生んだ日本の文化を支える貴重な存在といえるでしょう。


山村を活性化する山菜

食生活が豊かになった現代では、山菜は歴史や伝統を感じさせるとともに、素朴な味わいや特有の季節感が好評で都市の人々の人気を集めています。また、山菜採りがブームとなり、山村の観光資源のひとつとなったり、地域特産物としても注目されるようになってきました。

山菜の需要の拡大に伴い、自生する山菜だけでは需要を賄うことができなくなってきました。これに対応すべく、農山村などでは、山菜の栽培が行われるようになりました。山菜は、地域経済の安定と就労の場の確保に大きな役割を果たしているのです。

このように、山菜は山村の魅力を増す観光資源のひとつとして、また、農山村での地域資源を活用した産業の一つとなっています。山菜を活用した地域おこしの取組みも各地で始まっています。これらは、山菜を採取する山の整備にも繋がり、木づかいとも結びつきます。山菜は、過疎・高齢化をはじめさまざまな問題を抱える日本の山村の活性化に一役買っているようです。


山菜名説明
行者大蒜
ぎょうじゃにんにく
採取時期:4〜5月頃(若芽、根)、東北・北海道では5月以降。幻の山菜といわれ、希少で高価な山菜。豚肉と組み合わせた炒め物や醤油漬けにしておくことが多い。修行中の行者が活力源として食用にしたことがこの名の由来。
大葉擬宝珠
おおぎばぼうし
ウルイ
採取時期:3〜4月頃(若葉)、5〜6月頃(茎葉)。葉柄を含めた葉身を若いうちに採取し、ゆでたあと、おひたし、和え物に。また、煮物、天ぷら、汁の実にもよい。葉柄のみを軽くゆでてから天日で干すと保存食になる。
独活
うど
採取時期:4〜5月頃(降雪量の多い地域では5〜6月頃)。うすくスライスして生でも食べられる。さっと茹でて和え物にしたり、天ぷらやフライにしても美味しい。特に、若い茎は独特の香りと苦みがあり好まれている。
多羅の芽
たらのめ
タラノキ
採取時期:暖地は3月頃、その他の地域は4〜6月頃。春先の新芽は、天ぷらや和え物などにして食べられる。カリウムを多く含み高血圧の方によく、健胃、強壮、強精作用があり、根皮は糖尿病にもよいといわれる。
漉し油
こしあぶら
採取時期:4〜6月頃(新芽、若葉)。コシアブラは天ぷらが最も美味しい調理方法といわれる。独特の風味があり、自然の旬を感じさせてくれる一品。この樹脂液を漉して塗料に使ったことがその名の由来。
草蘇鉄
くさそてつ
コゴミ
採取時期:暖地は4月頃、その他は4〜5月頃。アクはほとんどなく、採ってきたばかりの物なら生でも食べられる。天ぷらで食べる事が多い。また、さっと茹で、鰹節を振ってポン酢で食べても美味しい。
紅葉傘
もみじがさ
採取時期:暖地では4月頃、それ以外の地方では5〜6月頃。天ぷらが美味しいとされるが、風味とほろ苦さがあり、おひたしやごま和えなどもよい。また油との相性も良く豚肉などと炒めてもよい。
蕗の薹
ふきのとう
採取時期:暖地で1〜2月頃(降雪量の多い地域では3〜4月頃)、茎葉は5〜7月頃。独特の香りと苦味があり天ぷらにすると美味しい。春を感じさせてくれる食材。おひたしや和え物の場合はアク抜きが必要。
根曲がり竹
ねまがりだけ
チシマザサ
採取時期:5〜6月頃。採取直後に、皮ごと七輪やグリルで素焼きし、皮を剥いて味噌や醤油などを付けて食べたり、皮を剥いて反割りにした物を天ぷらにしてもとても美味しい。

わらび
採取時期:若芽は暖地で4月頃、その他の地域では5〜6月頃。産毛が多く、茎が太く短く、首が上を向く前のものが柔らかく美味しい。灰汁抜きが必要。お浸し、山菜サラダ、炊込ご飯、天ぷら、パスタ具材としても美味しい。
山葵
わさび
採取時期:若葉と花は暖地で3月頃、その他の地域では4〜6月頃。葉は夏〜秋、根茎は通年。葉ワサビや花ワサビは醤油漬けが最も美味しいといわれる。また、春を感じる揚げ物として、天ぷらに用いられることも多い。
蠎草
うわばみそう
ミズナ
採取時期:若葉は4〜5月頃、茎葉は4〜9月頃。葉を取り除いた根や茎を水洗いして、茎の皮を除き、塩茹でにして細かく刻んで食べる。また、茎・根を叩いてその汁を切り傷・虫さされなどに塗ると、薬草にもなる。

〔参考・引用〕
林野庁「Rinya No.86」/戸川嵩士氏「旬の食材百科」/webio「薬草植物」/日本特用林産振興会/現代俳句データベース