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シカが森林を荒らしているというような話をよく耳にするようになりました。実際にかなり深刻な問題となっています。 林業では,苗木ばかりでなく,長い年月をかけて育てた植栽木の枝葉や樹皮が食べられたり,剥がされたりして正常に育たなるという問題が生じています。
シカが土砂崩れを起こした!?
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シカの食害で植生が失われ土砂が流出 |
東京の奥多摩町のある山林では,せっかく植えた苗木がシカに食害されたため,もう一度,植林を行いました。ところが,またシカに食べられてしまい,さらにもう一度植林・・・というようなイタチゴッコを繰り返しているとのこと。そのうちに下草も食べてつくされてしまったため,土や岩がむき出しになり,地盤が弱くなってしまいました。そのとき,運悪く集中豪雨に見舞われ,土砂崩壊が起こり,水道の取水口をふさいでしまうという災害が起こりました。
お花畑がキャベツ畑に!?
東京都最高峰である雲取山では,防火帯と呼ばれる切り開かれた場所があります。かつてはお花畑のように植生が豊かだったのですが,ここでもシカの食害に遭い,シカが嫌いな植物のマルハダケブキだけが残り,まるでキャベツ畑のようになってしまっているとのことです。
シカも食料難で,ひもじい生活をしている
シカの越冬期の主食はササであり,本来はスギやヒノキではありません。周辺にササが多いところでは林業被害は少ないようです。シカは相当に過密な状態になっています。東京都では平成5年〜平成16年の12年間で400頭から2000頭(5倍)に増えました。その結果,エサが不足し,特に冬のエサの少ない時期には枯葉まで食べているようです。胃の中を調べると 主食であるササが年々少なくなる一方,シカが本来あまり食べない針葉樹や栄養価の低い枯葉や樹皮が増加し,栄養状態はかなり悪いようです。シカは食べるものがなくなり、植林されたスギやヒノキの樹皮も食べるようになったため林業被害が広がっているわけです。シカもひもじい思いをしながら耐え抜いているのです。
シカの天敵は不在,ポストオオカミが必要
シカは繁殖力の高い動物ですが,昔はオオカミなどの捕食者(天敵)がいたため,生態系の中でバランスが保たれていました。そのオオカミが絶滅してしまったことが,シカの数が増大した原因の一つと考えられています。オオカミを滅ぼしてしまった人間が,そのオオカミの代わりにシカを一定数に減らして,健全なバランスを保つことも必要なのかも知れません。
岩手県の成功事例 このグラフから何か読み取れますか?
岩手県では6000頭いたシカを3000頭程度まで減らすことにより,農林業の被害額を劇的に減らすことができました。このグラフはそのときの捕獲頭数と被害額の推移を表したものですが,93年までの5年間は捕獲しているにも関わらず被害額が増えていますが,それ以降は急激に減っています。なぜでしょうか?
シカはいわゆる「一夫多妻」です。そして1年に1回1頭のみ出産します。単純に考えれば,毎年大人のメスシカの頭数と同じだけ子が生まれて増えていくわけです。そのためシカ問題を捕獲により解決しようとする場合は,メスをを捕獲することが必要です。オスを捕獲しても残ったオス一頭で「一夫超多妻」制になるだけで,オスを捕獲しても効果はないのです。上のグラフを見ても,メスの捕獲頭数がオスの捕獲頭数を超える1993年以降は被害額が劇的に減っています。
※シカの出産率はメスの年齢により,2年に1回などもあり得ます。また,頭数の増加については自然死亡等を考慮していません。
〔参考文献・出典〕
林野庁「森林・林業白書」/森林総合研究所「深刻化するニホンシカによる森林被害」/東京都農林総合研究センター/社団法人国土緑化推進機構「ぐりーんもあVol34」 |