日本は、地理上、森林(樹木)が成長する条件として、大変恵まれた環境にあります。
日本は、南の沖縄(北緯25度付近)から、北の北海道の北緯45度の間に位置しており、陽光に恵まれた比較的温暖な地域にあります。また、太平洋と日本海に囲まれ、それぞれ黒潮と対馬海流という二つの暖流に挟まれています。暖かな海流に伴う水蒸気は、夏の季節風(主に南西の風)と冬の季節風(主に北西の風)により、日本の山地に吹き付け、雨や雪をもたらします。このように日本は一年を通じて、満遍なく豊かな水に恵まれているのです。このように、日本は全国的に十分な降水量があるため、どこでも樹木が育つ環境(風土)になっています。
また、上記のように地理的に南北に長く、地形が複雑であるため、水平方向、垂直方向においても多様な気候帯を持ち、それに伴い、森林も多様になります。沖縄の亜熱帯から北海道東部の亜寒帯まで多様な気候に伴い、森林もそれに応じて多様になります。また、狭い国土に3000m級の山を持ち、急峻(きゅうしゅん)な地形であるため、低地帯~高山帯まで、高度(気温)に応じて森林も多様になります。
低木林〔ハイマツ林〕
おもに針葉樹からなる低木林帯です。本州中部の標高3000m前後の高山や北海道の一部地域の標高1500mを超える山岳地帯で主にハイマツが見られますが、
亜高山帯のオオシラビソ
主に寒冷地の山頂付近に見られ、冬でも落葉しない 常緑針葉樹を主要樹種(優先樹種)とする森林です。北海道ではエゾマツやトドマツ。本州では、シラビソ、オオシラビソ、トウヒ、コメツガなどの林が見られます。
夏緑樹林 落葉広葉樹林帯のブナ林
日本の冷温帯(北海道南部から九州の山地)に見られ冬季に落葉する落葉広葉樹を主要樹種(優先樹種)とする森林(落葉広葉樹林)です。特に、東北地方や本州中部の山地などで見られるブナ林は自然林が多いため豊かな自然の象徴となっています。ブナの他にもミズナラ、ハルニレ、ケヤキ、トチノキ、カエデ類が見られ、秋には美しく紅葉します。
照葉樹林 常緑広葉樹林〔スタジイ〕
日本の暖温帯(本州から九州の低地)に見られる常緑広葉樹を主要樹種(優先樹種)とする森林(常緑広葉樹林)です。特に、本州中部より南の地域の低地に見られるシイ・カシ類(スダジイやウラジロガシなど)の林が代表的で、アオキなどの低木も見られます。また、四国や九州、紀伊半島などの温暖な地域の海岸近くではツバキなどの林が見られます。他にもイスノキ、タブノキなどの常緑広葉樹に加え、里山林(二次林)では、クヌギやコナラなどの落葉広葉樹も見られます。
亜熱帯多雨林 マングローブ
日本の亜熱帯に見られる常緑広葉樹を主要樹種とする森林(亜熱帯多雨林)です。琉球諸島には、オキナワウラジロガシやアコウなどの常緑広葉樹が広がり、ヒカゲヘゴなどの木生シダが優占する森林も見られます。八重山諸島などの海岸ではマングローブの林も見られます。マングローブの林は泥地に生え、潮が満ちると水中に沈みます。
〔参考文献・出典〕
一般社団法人日本林業協会「森林と林業(2014年1月)緑の論壇」/写真:北海道立理科教育センター/林野庁「RINYA No82」