森林の定義 森林とは

森林とは、一般的に多くの樹木や竹が密集して生育している場所を指します。「森林」と聞いて「たくさんの木が生えている場所」を思い浮かべる方は多いでしょう。しかし実際には、どこからどこまでを森林と呼ぶかについて、世界共通の明確な定義が存在するわけではありません。

森林の定義は、森林を管理するための法律、森林面積を調べる統計、地球温暖化対策のための温室効果ガス算定、世界各国の森林を比較する国際統計など、それぞれの目的によって異なります。

そのため、同じ土地であっても、ある制度では「森林」とされ、別の統計では森林として扱われないことがあります。森林面積などの数字を見るときには、「どのような定義で森林を数えているのか」を確認することが大切です。

01/09

一般的な意味での「森林」

冒頭の通り、一般的に森林とは、多くの樹木が密集して生育している場所を指します。「森」や「林」とほぼ同じ意味で使われることも多く、辞書などでは次のように定義されています。

しん‐りん【森林】… 広辞苑第5版
樹木の密生している所。もり。はやし。
しん りん【森林】… 大辞林
多数の高木が広い範囲にわたって、枝と枝が接するように密生している所。もり。
森林(しんりん、英:forest)… Wikipedia
広範囲にわたって樹木が密集している場所である。集団としての樹木だけでなく、そこに存在するそれ以外の生物および土壌を含めた総体を指す。

ここで注目したいのが、上記のWikipediaの記述にある「生態学的」な視点です。生態学において、森林は単なる「木の集まり」ではありません。

高木や低木、草本植物をはじめ、菌類、昆虫、鳥類、哺乳類などの多様な生物、そして土壌、水、大気などが互いに影響し合って成り立つ、一つの「森林生態系」として捉えることができます。

つまり森林とは、日常的な意味での「木がたくさん生えている場所」という側面に加え、より広い意味では「樹木を中心として形成される豊かな生態系」そのものであるといえます。

※「もり」には「森」のほかに「杜」という漢字が使われることがあります。「杜」は字形を見ると「木」と「土」からできており、日本では古くから神社のある木立や神域などを表す「もり」の字としても使われてきました。「杜」という字の成り立ちが、そのまま「木と土からなる森林」を意味しているわけではありませんが、森林を考えるうえで「木」だけでなく、その木を支える「土」にも目を向けるきっかけになる興味深い漢字です。実際の森林も、樹木と土壌、そこに生きるさまざまな生物が互いに関係し合うことで成り立っています。

02/09

森林法における「森林」の定義

日本で森林を行政的・法律的に考えるうえで重要なのが「森林法」です。

森林法第2条では、森林を次のように定義しています。

一 木竹が集団して生育している土地及びその土地の上にある立木竹

二 前号の土地の外、木竹の集団的な生育に供される土地

ただし、主として農地、住宅地、またはこれらに準ずる土地として使用される土地と、その上にある立木竹は除かれます。

ここで重要なのは、森林法上の森林が「現在たくさんの木が生えている場所」だけではないことです。

「木竹の集団的な生育に供される土地」も森林に含まれるため、伐採によって一時的に木が少なくなっている土地であっても、引き続き森林として利用される土地であれば、森林として扱われることがあります。

03/09

森林法では、木が生えていれば、すべて森林になるわけではない

森林法の定義を理解するときに大切なのは、木の本数や見た目だけで森林かどうかが決まるわけではないという点です。

例えば、リンゴ園、ミカン園、クリ園などの果樹園には、多くの樹木がまとまって植えられている場合があります。しかし、主として農地として利用されている土地は、森林法上の森林から除かれます。

また、住宅の庭や市街地の緑地、公園などについても、樹木があるという理由だけで森林法上の森林になるわけではありません。

逆に、木材生産のために樹木を伐採した直後で、一時的に木がほとんどなくなった土地でも、再び造林して森林として利用する土地であれば、森林として扱われることがあります。

このことから、法律上の「森林」は、現在の景観だけではなく、土地の利用目的や森林としての継続性まで含めて考えられていることがわかります。

04/09

温室効果ガス算定などで使われる日本の森林の定義

地球温暖化対策では、森林が二酸化炭素を吸収・貯蔵する働きをどのように算定するかが重要になります。

そのため、森林について面積や樹高、樹冠被覆率などを数値で示した基準が用いられています。

日本は、京都議定書に基づく森林吸収量の算定などにおいて、森林について次の数値的な基準を設定しました。

最小面積:0.3ha
最小樹冠被覆率:30%
最低樹高:5m
最小の森林幅:20m

0.3haは3,000平方メートルです。

「樹冠被覆率」とは、上空から見たときに、枝や葉が広がる樹冠によって土地が覆われている割合のことです。

これらの数値は京都議定書に関連して設定された森林の定義として知られていますが、現在も日本の温室効果ガスインベントリなどで森林を把握するための基準として用いられています。

05/09

FAOが世界の森林を比較するときの定義

FAO(国際連合食糧農業機関)は、「世界森林資源評価(FRA)」によって、世界各国の森林資源を継続的に調査しています。

国によって森林の考え方が異なるため、世界の森林面積を比較するためには、できるだけ共通した基準が必要になります。

FAOでは、森林(Forest)を、おおむね次の条件を満たす土地として定義しています。

・面積が0.5haを超えること
・樹高が5mを超える樹木、またはその高さまで成長できる樹木があること
・樹冠被覆率が10%を超えること、または将来その状態に達すること
・主として農業や都市的土地利用に使われていないこと

この定義の特徴は、現在十分な大きさの木があるかどうかだけではなく、その土地で樹木が将来基準に達する能力も考慮することです。

そのため、植林されて間もない若い森林や、伐採・自然災害などによって一時的に樹木が少なくなっている土地でも、森林として再生すると見込まれる場合には森林に含まれます。

一方、果樹園など農業生産を主目的とする樹木の集団や、都市公園、庭園などは、原則として森林には含まれません。

06/09

FAOの定義と「日本の森林区分」は同じではない

ここで注意したいのは、FAOが国際比較のために設定している森林の定義と、日本が国内で森林資源を把握するために用いている森林の考え方が、完全に同じものではないという点です。

日本では、森林法に基づく森林の考え方を基礎として、森林資源を把握してきました。

また、森林の状態を把握するため、「立木地」「無立木地」「竹林」などの区分が使われています。

立木地

樹木がまとまって生育している森林です。森林資源調査などでは、樹冠の占有割合など一定の基準によって把握されます。

植栽されて間もない幼齢林については、現在の樹木が小さくても、将来森林として成長することを前提として扱われます。

無立木地

森林として管理されている土地のうち、立木地や竹林に該当しない土地です。

例えば、伐採後で一時的に立木が少なくなっている土地などが含まれることがあります。

竹林

竹がまとまって生育している森林です。日本の森林統計では、一般の樹木からなる森林とは区分して把握されることがあります。

07/09

なぜ森林の定義はいくつもあるの?

森林の定義が一つではないのは、「どれかの定義が間違っている」からではありません。

森林を定義する目的が、それぞれ異なるためです。

森林法では、森林を適切に整備・保全し、森林計画などの制度を運用する必要があります。そのため、現在木が生えているかどうかだけではなく、森林として利用される土地まで含めて考えます。

一方、FAOの世界森林資源評価では、国ごとに異なる森林をできるだけ同じ物差しで比較する必要があるため、面積、樹高、樹冠被覆率などの数値基準が重要になります。

また、地球温暖化対策では、森林による二酸化炭素の吸収量や排出量を継続的に計算するため、森林と森林以外の土地を一定の基準で区別する必要があります。

つまり、「森林とは何か」を考えるときには、単に木が生えているかを見るだけではなく、「何のために森林を定義しているのか」を考えることが大切なのです。

08/09

森林の定義を比べてみよう

■ 一般的な意味
多数の樹木がまとまって生育している場所。生態学的には、樹木だけでなく、そこに暮らす生物や土壌、水などを含む森林生態系として捉えることもあります。

■ 森林法
木竹が集団して生育している土地とその立木竹、および木竹の集団的な生育に供される土地。ただし、主として農地や住宅地などとして利用される土地は除かれます。

■ 日本の温室効果ガス算定などで使われる基準
最小面積0.3ha、最小樹冠被覆率30%、最低樹高5m、最小森林幅20mという数値的基準が用いられています。

■ FAOの世界森林資源評価
0.5haを超える土地で、樹高5mを超える樹木と10%を超える樹冠被覆率を有するか、将来その基準に達する土地を基本とします。ただし、主として農業や都市的土地利用に使われている土地は除かれます。

09/09

「森林」は木だけを見ても決められない

私たちが普段使う「森林」という言葉は一見単純ですが、詳しく見ていくと、その意味は目的によって異なります。

木がたくさん生えていても、果樹園のように農地として利用されていれば森林に含まれない場合があります。

反対に、伐採直後でほとんど木が見えなくても、森林として再生・管理される土地であれば森林として扱われることがあります。

したがって森林とは、単なる「樹木の集まり」だけではなく、樹木の状態、土地の広さ、土地利用、将来の利用目的などを含めて捉える必要があります。

森林面積や森林率などの統計を見るときにも、「森林が何haあるか」という数字だけを見るのではなく、「その統計では森林をどのように定義しているのか」に注目すると、森林についてより正確に理解することができます。

木がないのに「森林」って本当?

みなさんは、「森林ってどんなところ?」と聞かれたら、どんな場所を思いうかべますか?

きっと、木がいっぱい生えている森を思いうかべる人が多いでしょう。

でも、森林の世界にはちょっとふしぎなことがあります。

木がほとんど生えていなくても、「森林」とよばれる場所があるのです。

木を切ったあとの山も森林?

木材を利用するために、山の木をまとめて切ることがあります。

木を切ったすぐあとは、山を見ても木がほとんどありません。

「それなら、もう森林じゃないのでは?」と思うかもしれません。

ところが、その土地にまた木を植えたり、自然に木が育つようにしたりして、これからも森林として使っていく場所なら、森林として扱われることがあります。

木がいっぱいあっても森林ではない場所もある

反対に、木がたくさん生えていても、森林ではない場合があります。

例えば、リンゴ園にはたくさんのリンゴの木があります。ミカン畑にもたくさんの木があります。

でも、これらは果物を育てるための「農地」です。そのため、森林法では、ふつう森林には含まれません。

世界では森林の決め方も違う

世界の森林を調べているFAOという国際機関では、森林かどうかを判断するときに、土地の広さや木の高さ、枝や葉がどのくらい土地をおおっているかなどを調べます。

このように、森林にはいろいろな決め方があります。

森林は「木があるか」だけでは決まらない

森林かどうかを考えるときには、木がたくさんあるかどうかだけではなく、その土地が何のために使われているのか、これからどう使われるのかも大切です。

今度、山や森を見たときには、「ここはどんな森林なのかな?」「木を切ったあとも森林なのかな?」と考えてみてください。

いつも見ている森が、少し違って見えるかもしれません。

森林・林業学習館 for きっず

このページのトップへ