日本の森林 - 早わかり

日本の森林 - 早わかりのイメージ写真
01/07

日本は木の国、森の国

日本は国土面積の67%が森林に覆われた世界有数の森林国です。つまり、自然環境の観点では、美しい景観と豊かな生物多様性を持つ国。産業的な観点からは、豊かな森林資源を持つ国といえるでしょう。日本では、5~6万年の旧石器時代から縄文時代を経て、現代に至るまで、人々は森の恵みを受けながら生活し、木の文化を築いてきました。

紅葉で色づいた朝霧の森/富山県の写真

日本は森林により美しい景観を持つ国 - 紅葉で色づいた朝霧の森/富山県


縄文時代の大型竪穴住居の内部(復元)の写真<br />縄文時代中期後半 - 約4300年前/三内丸山遺跡 - 青森県

日本は太古の昔から木の文化を築いてきた国 - 縄文時代の大型竪穴住居の内部(復元)
縄文時代中期後半 - 約4300年前/三内丸山遺跡 - 青森県


第四高等学校武術道場 - 愛知県明治村

第四高等学校武術道場(愛知県明治村)


02/07

特殊な風土で多様な森林をもつ日本

日本は全国的に十分な降水量があるため、樹木が育つのに適した風土になっています。つまり、全国どこでも樹木が育つ環境です。

また、日本を地理的見ると、南北に長く、急峻(きゅうしゅん)で複雑な地形になっています。このような地理的環境により、水平方向、垂直方向にともに多様な気候(帯)をもたらしています。そして、多様な気候(帯)に対応して、森林(植生/樹種など)も多様になります。

水平方向に見れば、沖縄の亜熱帯から北海道東部の亜寒帯までの多様な気候を持ち、森林(植生/樹種など)もそれに応じて多様になります。

また、垂直方向に見ると、狭い国土に3000m級の山を持ち、急峻(きゅうしゅん)な地形であるため、低地帯~高山帯まで、高度に応じて気候環境が変化し、森林(植生/樹種など)もそれに応じて多様になります。

日本の森は樹種も様相も多様

日本の森は樹種も様相も多様


北海道:空知郡上富良野町/アカエゾマツ


新潟県:東頸城郡松之山町/ブナ林(美人林)


鹿児島県:熊毛郡(屋久島)ヤクスギランド/ヤクスギ(天柱杉)


03/07

日本は世界有数の森林大国

日本の森林率を表すグラフ

日本の国土面積の約7割は森林

日本の森林は約2500万haです。国土面積に占める森林面積(森林率)は約7割で、先進国の中ではフィンランドに次いで2番目となっています。

※FAO「Global Forest Resources Assessment 2015」

なお、日本の森林のうち約1300万ha(約5割)が天然林、1000万ha(約4割)が人工林、残りが無立木地、竹林となっています。

04/07

日本の森林の区分と森林の保全

日本の森林は次の表の例のように、いくつかの観点から区分されています。

観点
森林の種類
人の手の入り具合 「原生林」「天然生林」「人工林」
森林の所有者 「国有林」「公有林」「私有林」
気候帯 「亜寒帯林」「温帯林」「亜熱帯林」…
主要構成樹種 「落葉広葉樹林」「針葉樹林」「照葉樹林」

いずれの森林も、人の手で適切にサポートしていく必要があります(人の手による管理、保全、経営など)

例えば、木材や林産物が持続的に生産するためには、「植林→育成→収穫→植林…」というサイクルを正常に循環させる必要があります。さらに、無計画な伐採による森林破壊、盗伐、病害虫、山火事などから森林を守る必要があります。

また、貴重な自然や動植物(生物多様性)を保護したり、地球温暖化防止、水源かん養、山崩れ防止などの公益的機能(=森林が人へもたらす恩恵)が維持できるように、人の手で管理・保全していく必要があるのです。

人が森林を守れば、森林は人に恩恵を与えてくれます。人と日本の森林は、ギブアンドテイクの関係で成り立っています。

05/07

日本の森林の価値は70兆円/年

日本の森林(杉木立)- 兵庫県神崎郡峰山高原

日本の森林(杉木立)- 兵庫県神崎郡峰山高原


日本の森林の評価額

日本の森林の評価額


森林は、木材などバイオマス資源の生産の場(いわば「木の畑」)であり、狩猟の場であり、キノコ、木の実・果実などの食糧生産(林産物生産)の場でもあります(※1)。生命に不可欠な水を蓄え、ゆっくりと時間をかけて水質を浄化しながら、絶えることなく供給してくれるのも森林です(※2)

また、森林は多くの生物の棲息(せいそく)の場であり、生物の多様性を維持しています(※3)。さらに、森林は土壌に根を張り土砂崩壊等を防いでくれます。つまり、国土を災害から守り、私たちが安全で快適な生活をおくるために欠かせない環境を整え、維持してくれています(※4)

そして、最近注目されているのは、森林の木々が、大気中の二酸化炭素(CO)を吸収し、木々の幹内や根などに貯蔵する機能(※5)です。森林は日本の温室効果ガスの吸収源として大きな役割を担っています。

これらの森林の持つ機能を貨幣換算すると、森林の評価額は年間で約70兆円(702,638億円)(※6)とされています。

私たち日本人は、古来より森林の恩恵を受けながら生活してきたのです。

※1:物質生産機能(経済資源としての機能)

※2:水源涵養(かんよう)機能

※3:生物多様性保全機能

※4:国土保全機能(土砂災害防止・土壌保全機能)

※5:地球環境保全機能

※6:日本学術会議の試算。貨幣換算可能な機能のみを合計。

06/07

日本は森林資源が豊富な国だが…

戦後、我が国は復興等のため木材の需要は急増し、供給が十分に追いつきませんでした。そこで政府は急速に植林を行う政策(拡大造林政策)をとりました。ところが木が成長し、木材として使えるようになるためには、少なくとも40年程度の期間が必要です。その間に、比較的安く、一度の大量に入手できる外材(輸入材)が多く使われるようになりました。さらに、昭和30年代の燃料革命により薪炭材は燃料として適さなくなり、国産材の需要はどんどん落ち込んでいきました。

豊富な森林と荒れた森林

豊富な森林(左上の写真)と荒れた森林(右上の写真)

今、拡大造林の時に植林したスギやヒノキなどが成熟し、収穫期を迎えています。しかし、我が国では木材の約7割は輸入材を使っています。我が国の木は使うべき時を迎えているのに、使われずに放置されている森林資源が目立つようになりました。また、国産材の需要の低下に伴い、森林を手入れする費用も賄えず、荒廃している森林も少なくありません。

※但し、2014年1月現在、昨年からの木材価格の上昇が続いています。

07/07

日本の木は伐って活かすべき時代

日本は森林資源が豊富な国です。森林を伐らないで守ったり、植えて回復しなければならないのは概ね海外(熱帯林)の事情で、日本とは異なります。今の日本では成長した森林を活かすべき時代なのです。

木造の図書館/秋田杉を使用(写真:国際教養大学)

木造の図書館/秋田杉を使用(写真:国際教養大学)


ドーム型施設

住宅資材


木製の橋

木製ガードレール



〔参考文献・出典〕
私の森.jp写真部/日本学術会議答申「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について」/長野県HP/国際教養大学HP


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