日本の森林の高齢化と世代交代
日本は国土の約3分の2が森林
日本は世界でも森林の多い国の一つです。林野庁の「森林資源の現況」によると、2022年3月末現在、日本の森林面積は約2,502万haで、国土面積の約3分の2を占めています。
森林面積そのものは長期的にみて大きく変化していません。しかし、森林の中に存在する樹木の量である「森林蓄積」は増加を続けています。
森林蓄積とは、森林に生えている樹木の幹の体積を合計したもので、森林資源の量を示す代表的な指標です。2022年3月末の森林蓄積は約56億m³に達し、そのうち人工林が約35億m³を占めています。
つまり日本では、「森林の面積が増えている」というよりも、森林の木々が成長し、森林資源として蓄えられている木材の量が増えてきたのです。
※林野庁によれば1966年の森林蓄積は18.9億m³でしたが、2022年には55.6億m³となっています。特に人工林では5.6億m³から35.5億m³へと大きく増えました。
どれだけの森林資源を使っているのか?
それでは、日本の森林資源はどれだけ使われているのでしょうか。次のグラフは、各国の森林蓄積(森林資源)とその伐採率です。

データ:「なぜ、いま木の建築なのか(学芸出版社)有馬孝禮 著」OECD加盟国の森林蓄積量に対する年間伐採量の比率
日本は他国と比べて自国の森林資源を使っていないことがわかります。しかも、日本で年間に利用する木材のうち7割以上は輸入材です。
戦後に植えた人工林が一斉に成熟している
日本の森林の約4割、約1,009万haは人工林です。その多くは、戦後から高度経済成長期にかけて木材を生産する目的で植えられたスギ、ヒノキ、カラマツなどの森林です。
当時植えられた木々は、その後数十年をかけて成長しました。現在では人工林の約6割が51年生以上となり、本格的な利用期を迎えています。
人工林の年齢構成を人間社会にたとえるなら、「若い世代が少なく、中高齢の世代が非常に多い」という状態です。森林について「少子高齢化」という表現が使われることがあるのは、このためです。
次の育成林(人工林)の齢級別面積(齢級別面積)は、昭和60年と平成28年と比較したものです。分布の形がほぼ変わらず、ほぼ同じ形でスライドしています。

齢級(れいきゅう)とは森林の年齢を5年ごとに表したもの
森林の年齢を表すときには「齢級(れいきゅう)」という単位がよく使われます。1~5年生を1齢級、6~10年生を2齢級、11~15年生を3齢級というように、林齢を5年ごとにまとめて表します。例えば10齢級は46~50年生、11齢級は51~55年生の森林です。「林齢」は、その森林が植栽や更新されてから経過した年数を表すもので、一本一本の木の年齢を意味する「樹齢」とは意味が少し異なります。
森林資源は「ある」だけでは循環しない
日本には現在、利用期を迎えた豊富な人工林資源があります。しかし、森林資源が豊富に存在していることと、その資源が持続可能な形で循環していることは同じではありません。
人工林を将来にわたって木材資源として利用していくためには、成長した木を適切な時期に伐採して木材として利用し、その後に苗木を植えるなどして森林を更新し、再び育てていく必要があります。
つまり大切なのは、「伐ること」だけでも「植えること」だけでもありません。
伐る → 使う → 植える → 育てる → 再び使う
という長い循環をつくることです。
日本の木材自給率は回復してきた
かつて日本では、国内で利用する木材の多くを海外からの輸入材に依存していました。しかし、近年は国産材の利用が増え、木材自給率は回復してきています。
林野庁の「木材需給表」によると、2024年の木材自給率は42.5%でした。
それでも木材需要のすべてを国産材でまかなっているわけではありません。利用期を迎えた国内の森林資源を、住宅だけでなく、非住宅建築、内装材、家具、木質材料など幅広い用途で有効に利用していくことが、森林の循環を進めるうえでも重要になっています。

大径化する人工林と新しい木材利用
人工林の高齢化に伴って、山から生産される丸太も太くなっています。このような太い丸太は「大径材」と呼ばれます。
従来、日本の製材工場の多くは、中程度の太さの丸太から柱などを効率よく生産する設備を中心としてきました。そのため、大径材を効率的に加工できないことが課題の一つとなっていました。
しかし、大径材は決して「使えない木」ではありません。太い丸太からは、梁などに使う平角材、ツーバイフォー工法用の構造材、板材、内装材など、さまざまな製品をつくることができます。
近年では、大径材に対応した製材設備の導入や加工技術の開発も進められています。森林資源の成熟に合わせて、木材を加工し、利用する側も変化していくことが求められています。
※林野庁も大径材の利用拡大を現在の重要課題としており、2026年に変更された森林・林業基本計画でも大径材対応設備や需要創出が盛り込まれています。
本当の課題は「伐った後」にある
利用期を迎えた人工林を伐採して木材として利用することは、森林資源の循環の第一歩です。しかし、それだけでは持続可能な森林利用にはなりません。
重要なのは、伐採した後に森林を確実に更新することです。
人工林として引き続き利用する場所では、苗木を植え、下刈りなどを行いながら若い森林を育てていく必要があります。この「再造林」が行われなければ、現在豊富にある森林資源を数十年後の世代へ同じように引き継ぐことはできません。
一方、すべての森林を同じように人工林として維持する必要があるわけではありません。地形や自然条件、木材生産への適性などを考えながら、人工林として循環利用していく森林と、針広混交林や天然林へ誘導していく森林などを適切に考えていくことも重要です。
※林野庁の令和8年度 森林及び林業施策でも、「再造林等を確実に実施する」ことが明記されています。
若い森林を育てることとCO2吸収
樹木は成長するとき、大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、炭素として幹や枝、根などに蓄えます。
一般に、若く成長の盛んな人工林では、樹木の成長に伴って多くの炭素が新たに蓄積されます。一方、森林が高齢化すると、森林全体としてのCO2吸収量は次第に低下する傾向があります。このため、将来にわたって森林のCO2吸収機能を維持していくためにも、適切な森林整備や再造林によって若い森林を育てていくことが重要です。

ただし、「高齢の木を伐れば、それだけでCO2削減になる」という単純なものではありません。森林には、それまで長い年月をかけて蓄えてきた大量の炭素があります。伐採後に森林を確実に更新すること、伐採した木材をできるだけ長く利用することなどを含め、森林と木材を一体として考える必要があります。
なお、森林のCO2吸収量は樹種や林齢、立地条件、森林の状態などによって異なりますが、人工林の高齢化は将来的な吸収量低下の一因となります。

天然林に多いブナでは比較的高齢になっても一定の吸収が続きますが、人工林で植林されたスギやヒノキでは11~20年生付近が高くなっています
森林は「伐るか、守るか」の二者択一ではない
森林について考えるとき、「木を伐ることは環境破壊」「木を伐らずに残すことが自然保護」と単純に考えてしまうことがあります。しかし、森林の役割や成り立ちは一様ではありません。
原生的な天然林や貴重な生態系を持つ森林など、自然環境や生物多様性を守るために保全を重視すべき森林があります。
その一方で、人が木材を生産する目的で植え、長年にわたって育ててきた人工林もあります。このような森林では、適切に管理しながら木を育て、成長した木を木材として利用し、再び森林を更新していくことが重要です。
また、急傾斜地や木材生産に適さない場所などでは、人工林として維持することだけが選択肢ではありません。地域の自然条件や森林に求められる役割に応じて、針広混交林や天然林に近い森林へ誘導していくことも考えられます。
大切なのは、すべての森林を同じように扱うのではなく、「守る森林」「木材資源として循環利用する森林」など、それぞれの森林に適した管理を行うことです。
日本の森林を次の世代へつなぐ
戦後に先人たちが植えた木々は、数十年の時間を経て、現在の私たちが利用できる森林資源へと成長しました。
現在、日本の人工林の多くが利用期を迎えているということは、私たちが豊富な森林資源を受け取ったということでもあります。
しかし、その資源を使うだけでは、次の世代にはつながりません。
成熟した木を適切に伐り、国産材として有効に使う。そして伐採した森林を再び更新し、次の50年、100年に向けて木を育てていく。
「伐って、使って、植えて、育てる」。
この長い循環を絶やさないことが、豊かな森林資源を次の世代へ引き継ぐために必要です。

日本の森は「おじいちゃんの木」ばかり?
日本には、スギやヒノキなどを人が植えて育ててきた「人工林」がたくさんあります。
その多くは、今のおじいちゃんやおばあちゃんが若かったころや、それより前に植えられた木です。何十年もたった今、それらの木は大きく成長し、木材として使える時期を迎えています。
森にも「世代交代」が必要なんだ
ところが、今の日本の人工林では、大きく育った木が多い一方で、植えられたばかりの若い木は少なくなっています。
人間の社会にたとえると、大人やお年寄りがたくさんいて、子どもが少ない状態に少し似ています。
そこで大切になるのが、森の「世代交代」です。
木を伐ることは、悪いことなの?
「木を伐ると森がなくなるから、木は伐らない方がいい」と思うかもしれません。
もちろん、自然のまま守ることが大切な森林もあります。でも、人が木材をつくるために植えて育ててきた人工林では、大きく育った木を利用し、そのあとに新しい木を育てることも大切です。
畑で野菜を育てて収穫し、また次の野菜を育てるように、人工林も長い時間をかけて資源を循環させることができます。
「伐る→使う→植える→育てる」
大きく育った木を伐る。伐った木を家や家具などに使う。そして、伐った場所に新しい苗木を植えて育てる。
「伐る→使う→植える→育てる」という流れを何十年もかけて続けることで、未来の人たちも木材を使うことができます。
木は伐ったあとも炭素をしまっている
木は成長するときに、空気中の二酸化炭素(CO2)を吸収します。その炭素は木の中にたくわえられています。
そして木を家の柱や家具にしても、その木材を使っている間は炭素が木の中にたくわえられています。木材は、いわば「炭素の缶詰」のようなものなんだ。
森で木を育て、大きくなった木を長く使い、そのあとにまた新しい木を育てる。そんな森と木の循環を未来へつないでいくことが大切なんだよ。
〔参考文献・出典〕
林野庁「森林・林業白書」
