三大巨桜 さんだいきょざくら

千年の時を生きる桜たち

三大巨桜(さんだいきょざくら)とは、全国にある桜の中でもとりわけ古く、規模が大きく、文化的価値が高いとされる3本の桜 ─ 福島県三春町の「三春滝桜」、山梨県北杜市の「山高神代桜」、岐阜県本巣市の「根尾谷淡墨桜」を指す呼び名です。いずれも千年以上の時を経て、今日まで人々の手によって守り継がれてきました。

🌸 三春滝桜(福島県三春町)

樹種:ベニシダレザクラ(紅枝垂桜)
樹齢:約1,000年
指定:国指定天然記念物

「三春滝桜(みはる たきざくら)」は、まるで滝のように枝を垂らして咲き誇る、紅枝垂れ桜の巨木です。毎年春になると、空から花びらが流れ落ちるような見事な姿を見せ、多くの花見客を魅了します。

かつて、戦後の荒れた時期に枝が枯れ、一時は「もう寿命か」とも言われましたが、地域の人々の尽力によって手入れがなされ、見事に復活。今では復興の象徴としても愛されています。

🌸 山高神代桜(山梨県北杜市)

樹種:エドヒガンザクラ
樹齢:推定2,000年(日本最古級)
指定:国指定天然記念物(実相寺境内)

「山高神代桜(やまたか じんだいざくら)」は、日本最古の桜ともいわれ、日蓮上人が通りかかった際、「この桜がずっと咲き続けますように」と祈ったという伝説が残る桜です。

実相寺の境内に静かに立つその姿は、長い年月を耐えてきた生命の強さを感じさせ、参拝に訪れた人々に静かな感動を与えています。

🌸 根尾谷淡墨桜(岐阜県本巣市)

樹種:エドヒガンザクラ
樹齢:推定1,500年以上
指定:国指定天然記念物

「根尾谷淡墨桜(ねおだに うすずみざくら)」は、その名の通り、花の色が散り際になると淡い墨色になるという珍しい性質をもつ桜です。満開の頃はうすいピンク、散る前はグレーがかった花びらになることから、人生の終わりの美しさを象徴するともいわれます。

昭和天皇が戦後にこの桜を訪れた際、「この桜は守るべき存在」とのお言葉を発し、それ以後、国や地元住民の協力で治療や補強が行われ、現在まで大切に守られています。

人と自然が育んできた千年桜

三大巨桜はいずれも、自然の中でただ生きてきたわけではなく、地域の人々が守り、支え、時には再生させながら生き続けてきた桜です。千年以上も花を咲かせ続ける姿は、人の心に希望と勇気を与えてくれます。
時代が移り変わっても、その美しさと力強さは変わらず、日本の「自然と共生する文化」の象徴として、これからも咲き続けていくでしょう。


このページのトップへ