厩肥 きゅうひ
厩肥(きゅうひ)とは
里山から採取した落葉や下草、ワラなどを馬や牛の厩舎(きゅうしゃ)の下敷きに使い、馬や牛が落とす排泄物(糞尿)とうまく混ぜ合わせてつくる有機肥料のことです。適切に発酵させることで、作物の栽培に適した良質な肥料になります。
森林との関係
厩肥は単なる家畜由来の肥料ではなく、森林と深い関わりを持つ循環資源です。特に、里山の管理や自然との共生の観点から、以下のような重要な関係があります。
1. 落ち葉や下草は重要な資源
厩肥に使われる床材は、ススキやカヤ、広葉樹の落ち葉など、里山の自然素材が中心です。これらは、家畜の排泄物と混ざり合いながら適度な湿度を保ち、発酵を促進する役割を果たします。秋には「落ち葉かき」と呼ばれる作業で、住民が里山に入り資源を集めていました。
2. 里山管理と生態系の保全
落ち葉や下草の採取は、里山の過密な植生を抑制し、山火事の防止にもつながります。また、定期的に人が山に入ることで、半自然的な環境が保たれ、動植物の多様性も維持されます。こうした営みは、持続可能な森林管理の一環でもあります。
3. 循環型農業を支える仕組み
厩肥は、森林 → 落ち葉 → 家畜の敷材 → 家畜の排泄物 → 厩肥 → 畑 → 作物 → 家畜の餌 という循環の中で活用され、地域資源を無駄なく利用する仕組みを支えてきました。これは現代のSDGs(持続可能な開発目標)にも通じる理念です。
4. 林業副産物の活用
広葉樹のオガクズや木屑など、林業副産物も厩肥の床材として利用されていました。これにより、林業と畜産・農業が相互に連携し、地域内での資源循環が成立していました。
5. 現代における厩肥の再評価
近年では、環境に配慮した有機農業や自然農法の現場で、厩肥が再び注目されています。特に、里山保全や教育・体験活動と連携した形で、落ち葉堆肥づくりの取り組みも広がりを見せています。