乾燥材とは|建築・家具に欠かせない木材乾燥の役割

寸法安定性と耐久性を高める木材乾燥

乾燥材とは、建築用材や家具材として使用される前に、人工的または自然の方法であらかじめ含水率を下げた木材のことを指します。木材は伐採直後、内部に多量の水分(生材で約50〜200%)を含んでいますが、そのまま使用するとひび割れ、反り、カビ、腐朽の原因となるため、乾燥処理が不可欠です。

乾燥によって寸法安定性・強度・耐久性・加工性・美観が大きく向上し、建築や家具、内装材、工芸品など幅広い用途で活用されます。

乾燥材のメリット

寸法安定性の向上

木材は湿度に応じて膨張・収縮する性質がありますが、事前に乾燥させることで内部の水分を安定させ、使用後の寸法変化(反り・ねじれ・割れ)を最小限に抑えることができます。

耐久性の向上

乾燥した木材は腐朽菌やシロアリなどの害虫が繁殖しにくく、腐れや虫害に強くなります。これは特に屋内使用や構造材として重要な特性です。

木材の品質向上

乾燥によって比重が軽くなり、取り扱いが容易になります。さらに、強度・硬度が向上し、加工時に刃物が傷みにくくなります。木目もくっきりと美しく浮かび上がり、内装材や家具に適します。

主な乾燥方法

乾燥方法 特徴
天然乾燥
(天乾)
屋外や風通しの良い場所に数か月〜年単位で放置し、水分を自然に飛ばす方法。コストは低いが時間がかかり、乾燥ムラも出やすい。
人工乾燥
(機械乾燥)
乾燥炉や除湿機を用い、短期間で効率的に乾燥。高温乾燥・中温乾燥・低温乾燥など温度制御により目的に応じた含水率に調整可能。
高周波乾燥・真空乾燥 新技術として、特殊な加熱方法(マイクロ波や減圧)により内部から均一に乾燥できる方式。高精度な加工材や厚板に有効。

含水率と用途の目安

乾燥材の品質は含水率(材に含まれる水の割合)で評価されます。

用途 含水率の目安
一般建築構造材 約15〜20%
内装材・家具材 約8〜12%
木工品・精密加工材 約6〜10%

近年の動向と技術革新

  • 省エネ・低炭素型の乾燥技術が開発され、バイオマスボイラーや太陽熱併用型乾燥炉が普及しています。
  • AI・IoT技術を使った乾燥工程の自動制御により、乾燥品質の安定化や省力化が進んでいます。
  • 輸出木材(特に米国・中国向け)では、燻蒸に代わる乾燥処理(熱処理)が植物検疫対策として活用されています。

乾燥材は、木材利用において欠かせない加工工程を経た「高性能な素材」といえます。近年では、環境負荷を抑えながら高品質な乾燥材を生産する技術が進化し、国産材の活用や木造建築の拡大にも貢献しています。住宅や家具、公共施設において「乾燥材」の性能を活かした設計がますます重要になっているのです。


このページのトップへ