低密度植栽 ていみつどしょくさい
コストを抑えた効率的な森づくりの新技術
「低密度植栽」とは、これまで1ヘクタールあたり約3,000本が一般的だった植栽密度を、1,000~1,500本に減らして植える再造林技術のことです。苗木の数を減らすことで、苗の購入費や植え付けにかかる人件費を大幅に削減でき、さらに下刈り作業の負担軽減や間伐回数の減少にもつながると注目されています。森林整備が求められる中、林業におけるコストの問題は大きな課題です。こうした背景から、「低密度植栽」は低コストで持続可能な森林づくりの有力な選択肢として期待されています。
低密度植栽のメリット
植栽密度を抑えて、苗木や労務費を削減
植える本数が減れば、当然ながら苗木代と作業費も減ります。例えば、スギの植栽では、通常の約3,000本/haから1,100本/haに密度を下げることで、植栽コストが約43%削減された事例があります。
※低密度植栽の植栽密度は、スギは1,000~1,500本/ha、ヒノキは1,500本/ha以上、カラマツは1,000本/ha以上が目安とされています。なお、自治体の補助制度には最低植栽密度の基準がある場合もあります。
初期の下刈り作業が軽減
本数が少ないことで、植えた苗木の間隔が広くなり、下刈り(草刈り)作業の効率がアップ。実際、全国19か所の実証試験では、植栽密度が低いほど下刈りの作業時間が短くなる傾向が確認されました。また、雑草木の繁茂により下刈り回数が増えるのでは、との懸念については、多くの実証地で密度差による競合状態の違いは小さく、下刈り回数は変わらない事例が多数報告されています。
※下刈り終了の判断は、植栽木の成長状況や雑草木の種類・繁茂状況を見極め、定期的に見回りながらを行なうことが大切とされています。とくに、初期成長が良い樹種(例:カラマツ)で、競合する雑草木の被度が低く、ササ・ススキ・キイチゴ類のように草丈が一定以上伸びにくい群落では、通常の回数で下刈りを終えられる可能性が高まるようです。熊本県美里町(スギ)や岩手県紫波町(カラマツ)の事例でも、いずれの密度でも植栽後5年で雑草木から突出し、4回目の下刈りで終了と判断可能との報告もありました。
成長スピードはむしろ速い?
研究によると、低密度で植えた場合、苗木は空間に余裕があるため、幹の太さが早く成長する傾向にあります。特に合板や集成材など「並材(普通品質の木材)」の生産を目的とするなら、十分に実用的です。
また、密度が下がっても、苗木の定着(活着)率や初期成長には大きな違いは見られないとの報告もあります。
低密度植栽は、近年の加工技術の進展と需要動向を踏まえると、再造林時の現実的な選択肢になり得るとされ、これからの林業における再造林の新たなスタンダードとして期待されています。コスト削減と作業効率の両立、そして木材需要の変化に対応した林業経営の一助として、今後さらに広まっていく可能性があるでしょう。
〔参考文献・出典〕
林野庁「低密度植栽で低コストで効率的な再造林を目指す!」/林野庁「森林づくりの新たな技術」/林野庁「スギ・ヒノキ・カラマツにおける低密度植栽のための技術指針」/北海道立林業試験場「植える本数を減らして