森林の定義 しんりんのていぎ

森林とは何か?──場面ごとに異なる森林の定義

森林には「高木が密に生育し、生態系が成立している空間」という一般的な定義がありますが、統計、法律、国際的な枠組みなど、使われる場面に応じて定義が細かく異なります。
ここでは、FAO(国連)京都議定書における日本の定義、そして森林法など、森林のさまざまな定義をまとめてみました。

一般的な「森林」の定義(概念)

高木性の樹種がある程度以上の密度で存在し、そこに特有の生態系が最低限度形成されるだけの広がりをもつ空間を指します。森林では、樹木を中心に多様な生物が共存しています。(教育・解説で広く用いられる概念的な定義)

京都議定書における森林の定義(日本の設定)

京都議定書では、各締約国が自国の森林定義を設定することが認められており、日本は以下の要件を採用しています。(第1回締約国会議 COP/MOP1 で登録)

  • 最小面積:0.3ヘクタール
  • 最小樹冠被覆率:30%
  • 最低樹高:5メートル
  • 最小の森林幅:20メートル

※この定義は、温室効果ガスインベントリやLULUCF(土地利用・土地利用変化・林業)報告など、気候変動枠組みに関連する計測・報告のための運用上の基準です。

FAO(国連)による定義

FAO(国際連合食糧農業機関)は、農業・林業・漁業・食料問題に関する国際統計や指針を定める国連の専門機関で、日本もFAO報告で以下の区分・定義を用いています。

日本がFAOの報告に用いている森林区分・定義

森林:木竹が集団して生育している土地およびその土地の上にある立木竹、もしくは木竹の集団的な生育に供される、0.3ヘクタール以上の土地。ただし、主として農地または住宅地(これに準ずる土地)として使用される土地およびそれらの上にある立木竹は除く。

  • 立木地:森林のうち、樹冠疎密度0.3以上の林分(幼齢林を含む)。
  • 無立木地:森林のうち、立木地と竹林以外の林分。
  • 竹林:立木地以外の森林のうち、竹(笹類を除く)が生立する林分。

日本の法律(森林法)における定義

森林法では概念上、「森林」とは立木の有無にかかわらず森林として適当な土地で政令に定めるものとされます(森林法第2条)。このため、伐採直後の皆伐地や幼齢林も、条件を満たせば森林として取り扱われます。

定義の比較表(要件の早見)

観点 一般的な説明 京都議定書
(日本)
FAO 報告での取り扱い(日本) 森林法(日本)
適用範囲 概念的・教育的説明 気候変動枠組み(LULUCF等)での計測・報告 国際統計・比較のための分類 国内の法的運用・規制
最小面積 明示なし 0.3 ha 0.3 ha 条文に面積数値の明示なし
樹冠被覆率 明示なし 30%以上 0.3(=30%)以上(立木地) 数値基準の直接明示なし
最低樹高 高木性の樹種を想定 5 m以上 FAOの国際基準では樹高閾値を設定するが、報告区分は各国の運用に依拠 数値基準の直接明示なし
最小幅 明示なし 20 m以上 面積・被覆率中心(最小幅は必須条件ではない) 数値基準の直接明示なし
備考 生態系の形成と持続性を強調 各国が自国定義を登録して運用 「立木地・無立木地・竹林」等の区分を併用 伐採直後でも一定条件で森林扱い

※ 比較表は主要な着眼点を簡略化した早見です。運用・解釈は目的(統計・報告・規制等)により異なる場合があります。

関連用語

  • 樹冠被覆率:上空から見た際に樹冠が地表を覆っている割合。
  • 林分:地形・樹種・齢級などが比較的一様な森林のまとまり。
  • 皆伐地:一時的に立木がないが、更新予定地として森林扱いされることがある。

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