全乾状態
木材の中に水分がまったく含まれていない状態
全乾状態とは、木材の中に水分がまったく含まれていない状態を指します。含水率で表すと0%の状態です。木材科学や材料試験の分野では基準となる重要な概念ですが、建築材料として通常使用されている木材では、現実的には存在しない状態とされています。
全乾状態はなぜ「現実的ではない」のか
木材は周囲の空気中の水分を吸ったり吐いたりする性質(吸放湿性)を持っています。そのため、完全に水分を除去したとしても、空気中に置けばすぐに再び水分を吸収してしまいます。
実際の木材の含水率は、周囲の温度や湿度の影響を受けながら変動し、一般的な使用環境ではおおむね12%〜15%程度で落ち着くことが多いとされています。このように、環境条件とつり合って安定している含水率のことを平衡含水率といいます。
含水率の考え方と注意点
含水率は、直感的に誤解されやすい指標の一つです。というのも、含水率は「木材全体の質量に対する水分の割合」ではなく、全乾状態の木材の質量に対する水分の質量の割合で定義されているためです。
計算式で表すと、次のようになります。
含水率(%)= 水分の質量 ÷ 全乾木材の質量 × 100
含水率100%の具体例
例えば、
全乾状態の木材の質量が 50g
含まれている水分の質量が 50g
の場合、水分と木材が半々で、全体の質量は 100g になります。
このときの含水率は、
50g ÷ 50g × 100 = 100%
となります。
「水分が半分しかないのに100%?」と感じるかもしれませんが、これは基準が全乾木材の質量であるためです。この点は、木材の乾燥や品質を理解する上での大前提となります。
全乾状態の役割と位置づけ
全乾状態は、実用上の木材の状態というよりも、
- 含水率を正確に測定するための基準状態
- 木材試験や研究における比較の基準
として用いられています。建築や家具、木工製品などの実務では、全乾状態そのものを目指すことはなく、使用環境に適した含水率で安定させることが重視されます。

木が「カラカラ」になったら?
~全乾状態ってなに?~
木は、見た目はかたそうですが、じつは中に水をふくんでいるって知っていますか? 山に立っている木も、おうちで使われている木も、みんな少しずつ水をもっています。
💧 木の中には水がある
木の中には、スポンジのようなすき間がたくさんあって、そこに水が入っています。 だから、木はまわりの空気がじめじめしていると水をすいこみ、かわいていると水をはき出します。
☀️水がぜんぶなくなったら?
もしも、木の中の水がぜんぶなくなったらどうなるでしょう? この「水が1てきも入っていない」状態を、全乾状態(ぜんかんじょうたい)といいます。
全乾状態は、木がカラカラにかわききった、とくべつな状態です。
でも、じつは――
👉 ふつうの生活では、こんな状態の木はありません。
なぜなら、空気の中にはいつも少し水があって、木はすぐにそれをすいこんでしまうからです。
📏どうしてそんな状態を考えるの?
「ないなら、なんで全乾状態なんて考えるの?」と思いますよね。
それは、
👉 どれくらい水をもっているかをくらべるための「ものさし」
として使われているからです。
たとえば、
「水がまったくない木をスタート」と考えると、
そこから「今はこれくらい水が入っているね」と、わかりやすくなります。
🤔100%ってどういうこと?
ちょっとびっくりする話があります。
水のない木:50g
入っている水:50g
このとき、水は半分しかないのに、
水分は100% と言います。
これは、
👉 「水の量を、木そのものの重さとくらべている」
からです。
🌿木は生きている材料
木は、切られても「水とつきあう」性質をもっています。
だから、カラカラになりすぎると割れたり、形が変わったりします。
そのため、
ちょうどいい水分をもった状態で使うことが、とても大切なのです。
✨全乾状態のまとめ
- 全乾状態は、木の中に水がまったくない状態
- でも、ふつうの木はそこまでかわかない
- 全乾状態は、水の量をはかるための「スタート地点」
- 木は水といっしょに生きている材料
〔参考文献・出典〕
九州木材工業株式会社「木の魅力・木の知識」/島根県 林業技術センター「製材・人工乾燥技術資料」/Oregon State University「Wood and Moisture Relationships」他
